蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2002年10月07日(月) きょうはなんのひ?

バス停までの道は、つい2、3日前までキンモクセイの香りでいっぱいだったのに、今日は銀杏(ぎんなん)の香り。何の前触れもなく、頭上からぽとぽと銀杏が落ちてくる。毎日この道を通るから、そのうちいつか銀杏が私の頭にあたるはすだ。そんなことを考えながら、あまり息をしないように歩いていると、横を通り過ぎる車が銀杏を踏みつけた。あたりはさらに銀杏臭くなる。

銀杏を本当においしいと思ったのは、数年前のことだ(それまでは、茶碗蒸しの銀杏なんて、噛まずに飲みこんでいた)。フライパンでからからと音をたてながら銀杏を炒る。ちょっと焦げた殻を割り、薄皮をむくと、つやつやとした黄緑色の実があわられる。炒った香ばしさと、実のほろ苦さが、とてつもなくおいしい。今年も銀杏をもらいに、知人の農園へ行こう。本来は蜜柑農園なのだけれど、他にも色んな実がなっている。そこでは銀杏の果肉を取り除くのに、使わなくなった古い洗濯機を使っている。もちろん、銀杏専用。土に埋める方法もあるけれど、こっちの方が効率がいいのかもしれない。

さて、2年前の今日、とてもいいことがあった。その日はとにかく“絵本気分”で、そんな“絵本気分”にクレヨンハウスははずせないから、数字の2とふたりで、夕方、青山のクレヨンハウスへ行った。1階であれこれ絵本を見ていると、上から人がいっぱい降りてきた。講演会が終わって、なにやらサイン会が始まる様子。誰かなあと思っていたら、やって来たのは、江國さん!

すごく驚いたのとうれしいのとで、私はすっかり気が動転してしまった。いったん外に出て、夕暮れの表参道をあてもなくうろうろ歩き、少し落ち着いてきたところでお店に戻り、その場で『絵本を抱えて部屋のすみへ』を買い、何気なくサイン待ちの列に潜り込んだ。私は偶然そこにいただけで、講演会には出席していなかったけれど、ちゃっかりサインをいただいてしまった。あの日、私たちは昼間からなんとなく浮かれていて、クレヨンハウスもその場の思いつきで行った。もしも絵本の神様がいるとすれば、私たちは絵本の神様に導かれてクレヨンハウスへ向かったのかもしれない。そんな不思議な感じのする日だった。

だから私たちにとって2000年10月7日は特別な日で、以来10月7日はふたりの間では“絵本記念日”となっている(数字の2が忘れていなければ)。絵本記念日には必ず絵本を1冊買う。今年は、佐藤さとる作・村上勉絵『おおきなきがほしい』を選んだ。これは、この夏の講習で仲良くなった3人の間で、いちばん話題になった絵本だ。


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