蜜白玉のひとりごと
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いつもより早く起きて、朝9時過ぎに市立室内プールへ行く。泳ぐのはとてもひさしぶりだ。ここは50Mプールで、広々していて気持ちがいい。朝いちばんなので人も少なく、自分のペースで好きなように泳げる。競争を仕かけてくる物好きなおばさんもいないし、泳ぎながらだんだん近寄ってくる迷惑なおじさんもいない。プールの底には、太陽の光がゆらゆら揺れている。水をかいて進む音しか聞こえない。
小さい頃は心臓が弱くて、4歳で死にかけて(これはつい最近になって両親から聞いたはなし。自分ではその時は単に入院しただけで、そんなに大変だったとは知らなかった)、そんなわけで小学校6年生までは、毎年大きな病院へ行っては1日かけてあれこれ検査をしなくてはならなかった。プールは健康のために、小学校2年生から通っていた。小学校6年生のとき、医者に「もうだいじょうぶでしょう。スポーツ選手になってもいいくらいです」と太鼓判を押され、そこそこ頑丈な心臓になったようだ。
その後、中学の3年間は、スイミングスクールの選手コースにいたこともあって、毎日ひたすら泳いでいた。平日は学校が終わってから3時間、日曜日には朝練と夕練があって、朝夕3時間ずつ、1日で1万5千メートルくらい泳いでいた。今の怠惰な私からはとても考えられないような、マッチョな生活をしていたのだ。過酷なのは夏休みで、夏休みは学校がないから毎日のように朝練と夕練があり、さらに朝練と夕練の間にときどき昼練なんていうのがあって、山登りやら市内ジョギングやら、コーチの勝手な思いつきで体力作りをさせられた。いつも筋肉痛と疲労でとにかくへとへとだったし、途方もなくお腹が空いていた。そんなときは1日5食だった。…やっぱり今の私からは想像つかないし、自分でもちょっと信じられない。でもまあ、おかげで体力は相当ついたし、泳ぐことには困らない。心臓も全く問題なし。
おもしろいのは、プールの中でも汗をかくということだ。泳ぎこむと、屋外のスポーツと同じように汗がだらだら流れてくる。心拍数が上がって、心臓が焼けるように熱い。限界まで自分を追いこむ。ある時点まではものすごく苦しい。それでもしばらく続けると、ふっと軽くなって苦しさが感じられなくなる。泳いでいるのが自分なのかどうなのかさえわからなくなる。そしてそんなとき、いいタイムが出る。体力的にはきつかったけれど、とことん真剣にやっていたし、泳ぐのは楽しかった。
今でも泳ぐのは楽しい。だけど、もうそんなにたくさん、そんなに速く泳がなくてもいい。それにたぶん、たのまれてもそんな風には泳げない。筋肉はだいぶ落ちたし(その頃より体重7キロ減!?)、持久力も落ちた。今は好きなように、のらりくらり泳ぐ。そのことがとても心地いい。また、コンスタントに泳ぎ続ける生活をしてみようと思う。
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