蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2003年03月22日(土) ひいおばあちゃんの思い出

ひいおばあちゃんが亡くなった。ひいおばあちゃんは昭和天皇と同じ年の生まれだから、今年で102歳。2年くらい前から病院で寝たきりの生活だったけれど、気持ちはとても元気だった。

それが突然、すっと消えるように亡くなってしまった。

夜、家族みんなが寝静まって、ひとり台所でお茶を飲みながら、ひいおばあちゃんのことを考えた。まだひいおばあちゃんが、おばあちゃんの家で一緒に暮らしていた頃のこと。

夏休みや冬休みにおばあちゃんの家へ行くと、「あらまあ、よく来たねえ。ずいぶん大きくなって」と、まるで電信柱でも見上げるかのように私を見て、笑顔で迎えてくれた。その頃の私はおもしろいほどニョキニョキと背が伸びていたので、ひいおばあちゃんは会う度にどんどん小さくなっていった。

ひいおばあちゃんは普段はひとりで過ごすことが多かった。自分の部屋で小さなテレビを見たり、ときどき着物を着てお芝居を見に出かけたりしていた。小学生の私には、自分専用のテレビを持っているひいおばあちゃんがとてもうらやましかった。

すべてがこじんまりと納まっているひいおばあちゃんの部屋に入れてもらうのも、特別な感じがしてうれしかった。実際、おじいちゃんもおばあちゃんもお父さんもお母さんも、大人は誰ひとり、ひいおばあちゃんの部屋には入らなかった。ひいおばあちゃんと私は小さなこたつでみかんやお菓子を食べて、お茶を飲んだ。それから、テレビでやっていた歌舞伎を見た。私は分かりもしないのに真剣に見ていた。そんなとき、ひいおばあちゃんはあまりしゃべらなかったけれど、どこかで心が通じている気がして安心だった。

そんなことを思い出していたら、涙がこぼれた。お彼岸にお迎えが来るのは幸せなんだって。


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