蜜白玉のひとりごと
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駅前の小さな店に足しげく通う。これまで本屋以外で足しげく通った店があっただろうか。そこは本屋ではないけれど、店主と本の話ができる。
店にはまず本好きがいて、それから本に関わる仕事をしている人がいて、そして自身は本好きというわけではないけれど本好きの話を聞くのを楽しんでいる人がいる。
好きな物事の近くには、自然と似たような人が集う。発信すれば行きっ放しじゃなくて、どこかではね返って形を変えて戻ってくる。いつも気にしていれば、いつかは何かが引っかかる。不確実だけれど、でもこれらは本当に起きることだ。ほとんどそのことを忘れているので、ある日ふとつながったりすると、だから余計にうれしい。
Iさんが職場を離れてから話せる人がひとりもいなくなった。仕事上の話や、簡単な世間話はするけれど、それ以上の話ができる人、ほかの話もしたい人がいない。職場には遊びに行っているわけではないのでそういうものかもしれないし、それでもいいと言えばいいけれど、今は職場のほかに外とつながるところはないから、やっぱりつまらないし少しさびしい。
こんなものかとあきらめかけていた頃に、その小さな店を見つけた。18時開店、レースの傘をかぶったオレンジ色の灯りとワインが待っている。さて、今日は何の話ができるだろう。
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