蛍桜

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いつもおんなじことばっかいうけど

立っている感触さえなくて
笑う喜びさえなくて理由を求めた

泣く意味さえなくて
手に入れる意味さえなくて
あの記憶の中の凍った空気を撫でる

誰も見てない 川の横で
なんとなく泣きかけてたころ
空はどんよりと曇っていて
決して笑っていてはくれなかった

土手を歩いて
息を吸い込んで
全て自分のものにしてしまおうかと思考を巡らせた
だけどそこにあったものは
錆び付いたゴミ箱だけだった

ゆるい坂を下れば犬が吠えた
その角を不慣れに曲がる
そこに、誰もいなくて

窓から眺めた空はなんだか狭くて
意味のわからない時間に翻弄された
君さえ笑ってくれれば
なんて、言えたのはいつまでだったかな

君はいつまでも目覚めない
気付かれないように、夜明け前
太陽に挨拶しながら歩いた
ここが自分の居場所じゃないってことは
ずっと前から気づいていた
君が僕の居場所を作ってくれようとしていることにも
ずっと前から気づいていたよ

だけど、それが完成することはないまま


出来立ての新しいカフェ
君はもう訪れたことがあるだろうか
もしないのなら、一緒に行きたい
そう願うのは、意味のないことだと知っている

誰も僕がここに存在することを
望んではいないのだろう
だけど僕がここにいたかった
ただ、それだけのために泣いた

初めて一緒にご飯を食べた
ただそれだけなのに
君は不思議だねと言った
ここにしかない、かけがえのないものを
純粋に信じる瞳が痛かった

僕が嫌だというのに、君は何もやめてくれなかった
嫌だということが合図のように
強引に歩こうとしていた
君も僕も、必死だった
そんなこと、知っている

少しだけでも、ほんの短い時間でも
そこにちゃんと光を見つけた
だから、もう自分を責めることはしないで
離した手
いくら自問自答しても正しいのかの答えはない
そういう渦の中で、僕らは出会ったのだから

でも、きっと、他の人は入れない渦なんだ
僕たちだからこそ入れた渦なんだ
二人の波長が合いすぎるからこそ
出来てしまった渦なんだ
ただその現実だけで、嬉しい

君の手の感触は忘れてしまった
君の笑い声も忘れてしまった
君の顔も、ほんの少ししか覚えていない

だけど、もしどこかで会うことがあったなら
すぐに分かるんじゃないかなっていう自信がある
でも、気づかないふりをするかもしれない

君は今も必死に歩いているんだろうなと思う
歩みを止めてしまった僕には、届かないくらいに

もしかしたらどこかで躓いて怒ってるかもね
こんな人生やってられるかって、また投げ出してるかも

だけど君だったら乗り越えれるし
君だったら歩いていける
僕が今まで出会った中で一番
純粋に前を向ける人間だから
自分でだってきっと分かってるはず
立ち止まっていたっていつか
自分が自分を奮い立たせる日はくるから

もし君が、ずっと躓いて転んだままでいるなら
僕がちゃんと歩き出したとき
容赦せず、横を通りすぎるよ
手も差し伸べない
優しい言葉もかけない
もしかしたら踏んづけちゃうかも
それでもいいなら、立ち止まってればいいよ
僕もいつか、君を追いこしたいし

でも、そんなことは絶対ないって思ってる
約束したし

頑張って前を向くしかないよ、僕らは

分かってるでしょ
それだけが取り柄なんだから


2010年08月11日(水)

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