蛍桜

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ギビへ


私はギビのことを、なんて呼んでいたかなぁ。
ギビちゃん、でも、ギビさん、でもなかった気がするから
多分「ギビ」だろうね。今もギビって呼んでいいかな。
一緒に居たのは、私が14歳の頃だったから、もう10年近く前になるね。
ギビは何歳だったっけ。年下だったことだけは覚えてるんだけど。
一度会う機会があったけど、逃しちゃった。
ギビはどこに住んでたっけ。関東だったっけ。
私は香川から神奈川に引越ししたよ。ここなら会えるかな。

ギビの書く文章は、少し灰色がかった透明にみえた。
私はそんなギビの書く文章がカッコいいと思った。
もともと文章書くのが好きだったけど、
ギビの文章を見てからもっと文章と笑い合うようになった。

私の中のギビは、今はこんなに曖昧だけど、
今の私の文章は、ギビのおかげで創られたものだよ。

あ、そうそう、ギビの名前の由来って「give it」だっけ。
なんとなくそうだった気がするんだけど、ギビ本人から聞いたのか曖昧。

ギビに会ってみたいな。
叶わないの?


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ギビのブログ、というか、記録簿というか。
見たよ。
ギビが、自分にもしものことがあったら
このURLをみんなに教えてくれって言ったんだよね。
ちゃんと、私も教えてもらえたんだよ。

ギビの訃報をもらって、初めて訪れた時は
最後の言葉がとても重くて
私はそれ以上、読めなかった。

1年経った今、改めて読んでみたよ。

ギビ。やっぱり。
自分で決めたんだね。

なんとなく、そうじゃないって信じたかったけど。
でもギビなら、そうかもしれないって思ってた。
ギビはいつも無機質なロボットのように
世の中に馴染もうとしてなかった。
だけど、私たちはちゃんと、ギビが一人の女の子だって知ってた。
ロボットのギビは、
きっともうこの世の中に飽きているんだろうって思ってた。
だけど、女の子のギビは、
きっとちゃんと生きているんだろうって、なんとなく、思ってた。

なんで、決めちゃったの。
それって、誰か知ってた?
ご両親と決めた、って、ご両親は泣かなかった?
どうしてあと1ヶ月だなんて、決めたの。
その1ヶ月、楽しかった?
本当に、思い残すことなかった?

決めた、って書いていても。
私はまだ信じられない。
ギビは、1ヶ月経ったら、死のう、だなんて
思わなかったんじゃないかって。

でも現に、その日から、一か月とちょっとで
私は訃報を聞いたから。
やっぱり計画的なものだったのかな。

救えたかもしれない、だなんて言わない。
なんとなくそういうのじゃないの、分かってるから。
救ってほしかったわけでもないよね。

ギビは、死ぬ時を自分で決めれて、満足かな。
苦しくなかったのかな。

分かんない。
死にたいって思ったことはたくさんあるけど。
本当に死ねるはずないって。
私も、私の周りの人も。
死ねるはずないって。思ってた。

私たちはちっぽけだから
自分を殺す力なんてない。そう、思ってた。

でもギビは、自分を殺す力を持ってた。
そういうことだよね。

ギビは、私から見れば、天才だった。
だから、若くして亡くなったって聞いても
天才って、そういうものなのかしら、って思った。
私の何十倍も濃度の濃い毎日を送っていたんだろうって。
そして天才は、天才であるがゆえに、長生きできないんだろうと。

でも、ギビ。
それでもギビは、女の子だったんだよ。

10年前に出会って。
ギビのこと、ちょっと怖いと思った。
いい子だっていうのは分かってた。
でもしゃべり方とか、書く文章とか。
無機質で、感情がなくて、怖かった。
でも、嫌われたくはなかった。
それから何年くらい、関わっていたのか、忘れてしまったけど。
ふわがいなくなったら
私たちも関わりがなくなってしまった。

ふわも、死んじゃったのかは分からないけど。
奇跡が起こったのかもしれないけど。
私たちはその討論をやめた。
ふわの影にしがみつくこともやめた。
最後まで優しかったふわの、重荷にならないために。

だから私も。そろそろ。
ギビが自分で決めて死んだのか。
行きたくて死んだのか。
討論をやめようと思う。

最後まで無機質だったギビに、一度でも会えれば。
ギビが天才でもなく
ロボットでもなく
温かい血の通った女の子だって分かったはずなのに。

私に刻まれたのは、
ギビが教えてくれた文章。だ。

ありがとね。

2010年08月12日(木)

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