沢の螢

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舞台の醍醐味
2002年03月15日(金)

先週見た井上ひさし「国語元年」をもう一度見に行った。初日の興奮と違って、出演者も演技に余裕が見られるし、見る方も、大体の展開が頭に入っているので、最初に気づかなかったことに気づいたり、前に見えなかったところが見えたり、また違った味がある。同じ芝居を二度見ることの良さが、よくわかった。
芝居の面白さは、なんと言っても生の舞台でしか味わえない臨場感であろう。たぶん、同じ舞台は2度とないくらい、一回一回違うのだと思う。何が起こるかわからない面白さと怖さ、演ずる方も、毎回違う客の雰囲気を前に、真剣勝負を挑むわけである。演じる方と、観る方とが、がっぷり4つに組んだとき、思いがけない至福の舞台が現れるのかもしれない。
その意味では、なるべく前の方で観るのが良い。今回は、2度とも、比較的前の方だったので、俳優の汗まで見えて、なかなか良かった。
ところで、私は、映画や芝居を観ているとき、必ずどこか一カ所眠くなる癖がある。それは、芝居がつまらないとか、役者の演技が下手だとか言うことではなく、一種の生理現象というか、条件反射みたいなものである。
ある時、サザンシアターで、ある舞台を観ていた。シリアスな芝居だった。私は、前から2列目ぐらいの席で見ていた。途中、例によって、うとうととした。時間を計ったことはないが、ほんの1,2分ぐらいだと思う。役者のセリフは聞こえているのに、夢の中のように、聞いていた。ふと目を開けると、舞台中央でセリフを言いながら、役者の目が私をにらんでいる。「おまえはこれでも寝るのか」と言わんばかりの、すごい形相で、私の目をのぞき込むがごとく、にらみ据えているのである。
役者にとって、演じているすぐ目の前で、寝ている人がいるというのは、気になるに違いない。悪いことをしたと思い、私も、まっすぐににらみ返した。
役者はすぐに元の目に戻り、芝居は続いた。
あんな経験は初めてである。
睡眠不足で芝居を観ると、こういう事も起こるからと、それ以来、芝居を観る前日は、よく寝るように、心がけている。

2002年03月15日 01時00分26秒



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