沢の螢

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3年ぶりの便り
2002年05月20日(月)

今日着いた郵便物の中に、珍しい人からの葉書があった。
3年前まで、とても仲良くしていた人。
私より5年ほど年上で、歌を通じて知り合い、何かにつけて相談相手になってくれたり、いろいろな話を聞いてくれたりして、世話にもなった。利口な彼女は、人望があり、交友も広く、人の面倒見が良くて、私にないところがたくさんあった。
でも、ある時から、私の方から、一切の付き合いを絶っていた。それまで、頻繁にやりとりしていた電話、ファックス、手紙、それらをすべてご破算にして、交友を絶った。一方的な決別宣言に、彼女の方も一切、返すことなく、そのまま時が経ったのである。
昨年夏、私はある音楽会で、偶然彼女に遭った。短い休憩時間の間だった。
どちらからともなく、「あら」と声を掛け合い、昨日の続きのように話をし、ベルが鳴ったのでそれぞれの席に戻った。
帰りの電車の中で、なぜか涙が止まらなかった。
でも、それきりどちらからも近づくことなく、1年近く経っていた。
先週の金曜日、以前習っていた歌の先生からの招きで、音楽会に行ったことを書いたが、その会に彼女も出演していた。
終わって帰りかけると、ほかの人たちと一緒に、彼女が居て、私を先生の楽屋に連れて行ってくれた。その時も、何の屈託もなかった。
楽屋で衣装を着替えるという彼女と、そのまま別れて帰ってきた。
そして、今日の便りだった。発表会に来てくれて有り難うということば、それに、最近引っ越して住所が変わったから知らせると言うことが、添えてあった。
私は返事を書き、最近は歌を忘れたカナリアになってしまい、パソコンに夢中になっていることをしたためた。それが、この3年間の一番大きな変化だった。
いつも彼女が心配してくれた私の老親の近況にも触れた。そういうことに経験豊富な彼女からは、何かと、いろいろなアドバイスももらったのだった。
友達になることはやさしい。しかし、友達でいることは難しい。
自分がひとに誠実であることは出来る。しかし、相手に同じものを求めることは出来ない。
そういうものに絶望したとき、むしろ寛大な気持ちで相手を受け入れることが出来るのかもしれない。
そして、私はまだ、その域に達していない。

2002年05月20日 19時08分42秒



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