沢の螢

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その他大勢
2002年07月10日(水)

芝居では、主な登場人物のほかに、通行人とか、その他大勢の端役がある。
これはオペラなども同じ、バックコーラスや、背景の一部としての、一声も出さずに登場している人たちがそうである。
舞台の上でのそうした役回りは、人からは注目はされなくても、なくてならぬものである。そして、このような役を演じている人は、いつかは自分も、名前のある役につき、いずれは主役になると言う夢と、希望があるからこそ、いま自分に振り当てられた役を、懸命にこなしているのであろう。
でもこれは、舞台という、虚構の世界の話、実際に生きていく場で、その他大勢の一人というのは、いいものではない。
昔の話だが、「うちに遊びにいらっしゃい」と誘われたことがあった。
そのころ親しくなった人で、緊張するような間柄ではないので、気軽に訪れた。すると、私のほかに、2人の人が招かれていた。
全く知らないわけではないが、特に話をしたいような人たちではなかった。私と、彼女たちとの間には、何の接点もなかった。
私が、ちょっと咎めるような目をしたのだろうか、その人は言い訳のようにこう言った。
「この際だから、ついでに皆さんを招んだの」
せっかく、手間ひまかけて、人を招ぶのだから、前から招びたいと思っていた人たちを、この際いっぺんによんでしまおうと言うことだったらしい。
彼女なりに心を尽くしたらしいことは、卓上に並べられた料理の様子でも、分かった。
そしてほかの二人は、結構、喜んでいたように見えた。
私は、その人たちと、表面は、穏やかに振る舞ったが、内心、面白くなかった。
それなら、事前に言ってくれたらよかったのにと思った。
ごちそうなんか、何も要らないから、私は、水入らずで、じっくり話をしたかった。
こういう扱いを受けるのは、自分が粗末にされたような気がして、いい気持ちはしない。
私だったら、招ぶ人の組み合わせを考えて、事前に全員の了解を取るだろうと思う。
彼女がそれをしなかったのは、気軽なつきあいを許している私への、甘えだったかもしれないが、私を尊重してないと言うことでもある。
私は、彼女にとって、それだけの存在でしかなかったのだと、悟るしかなかった。
八方美人は、私は嫌いである。少なくとも、こういう人と、友達にはなりたくない。
私は、誰とでも、1対1でつきあいたい方なので、その他大勢の一員になることは、好まない。
自分がそのように扱われたと感じたときは、そこから遠ざかる。
舞台の端役だって、家に帰れば、かけがいのない父親であり、妻であり、息子や娘であるはずだ。
ついでに、とか、数合わせのために、誘わないでほしい。
私の、ささやかな五分の魂である。

2002年07月10日 01時07分51秒



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