沢の螢

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昭和20年の夏
2002年08月01日(木)

先日新宿の本屋で、目にとまった一冊。
NHKテレビで、今月から放映される予定の教育テレビテキスト、「終戦日記を読む」という講座で、野坂昭如が、講師となっている。
著名人の日記、市井の1少女の日記など、日本人が書いた、終戦前後の日記を読みながら、戦争を考え、語り継ぐというもの。
興味深いので、買ってきた。

もうすぐ、8月6日が来るが、広島で、母方の叔母が原爆で死んでいる。
母の実家は、広島中島本町で、店をやっていた。
家族がみな、別のところに出かけ、たまたま、ひとりで留守番していた未婚の叔母が、従業員4人とともに、原爆の犠牲となった。
爆心地に近いところ、その辺で生き残った人はいない。
あとから、葬式をしようにも、どれが誰の骨とも分からないほどだったという。
終戦後の秋、母は、疎開先の、父の実家から、私を伴って、遅れた叔母の葬式に広島まで行った。
真っ黒に焼けただれた裸木、一面瓦礫の山となった駅前の風景、今でもよく覚えている。まだ、放射能が、残っていたかもしれないが、そんなことは、母も分からなかったであろう。

3年前、母を連れて広島に行った際、平和公園を訪れた。
母の実家のあった場所は、少女の像の近くである。そばにある、大きな土饅頭は、名もなく亡くなった、多くの人たちの骨が埋まっていると聞いた。
「日本人は戦争を伝えていない」と、野坂氏は書いている。
60をすでにいくつか超えた私が、やっとかすかに覚えているくらいの、戦争の記憶。
世代交代が進み、やがて戦争の生き証人は、いなくなってしまうだろう。
どんな些細な断片でもいい。書き残し、語り継いでいくべきではないだろうか。
無念の死を遂げた人たちのために。

2002年08月01日 23時31分15秒



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