独り言
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2006年04月16日(日) テリーデイズというBandについて・その1

1989年6月15日

イタリア系アメリカ人と中国人のハーフである父と日本人の母を持つ李 亜龍(本名:アーロン・ユウ・パークハイド/当時17歳)は
その頃の中国における表現・言論に対する余りに厳しい規制に異を唱え
独りアコースティックギターを手にし北京繁華街の裏通りにて
『歌による表現闘争』
を開始する

その時に使用していたギターはノーブランドのお粗末な物で
弦は4本しか張られていなかった


亜龍曰く
「指が5本しか無いのに弦が6本もあったら大変じゃんか

俺には4本もあれば充分だよ

何より
音楽の善し悪しは弦の数で決まる訳じゃないからね」
という事だが
実際の理由は
亜龍が父の忘れ形見であるこの古ぼけたギターに新しい弦を買い与えるだけの金も無い程の貧困の住人であったという所にあると思われる

貿易船の機関士であった父を幼くして亡くし
亜龍は母がその身を切り売りして稼いだ金でここまで生き延びてきた



幼い頃から亜龍を知る人間は

「学校に上がったばっかのガキの頃はいたって普通の奴だったよ
可もなく不可もなくって感じ

アルが普通じゃなくなっちまったのは…親父さんが居なくなってからだね


常にキョロキョロしてあっちへ行ったりこっちへ行ったり
デカい声で喋り散らしたかと思えば急に押し黙って

…そして気が付けばいつも居なくなってるんだ
もとから居なかったみたいに何も言わずに消えちまうんだよ


変わった奴だったよマジで

居るときはとにかく良く喋ったね
相手が聞いていようがいまいがお構いなしでさ
真面目な話から下らない馬鹿話まで何でもありだった

でも特に印象に残ってるのは…夢の話かな

アルがその日に見た夢の事を詳しく説明してくれるんだけど…それがもう1から10まで意味不明でさ

デカいリンゴを崇拝する宗教団体の話とか腐った牛肉の塊にまたがって空を飛んで万里の長城を越えた話とか

…あと笑えるのがパンティストッキングを頭から被ったらその中は複雑な迷路になってて…角を曲がるたびにマッチョな軍人が待ち構えてて折檻されるんだけどその軍人ってのが実は全員サディスティックなゲイで職務に乗じて楽しんでやがるその姿勢が憎くて仕方ないってアルの奴マジでムカついててさ
…『こうゆう場合は体制に訴えかける他はない』とか言っちゃって…走ってくる軍の車に飛び込もうとしたんだぜ

『手っ取り早く軍の上層部と接触するにはこれしかない』っつってさ


…イッちゃてるよね完璧に


まぁ変り者だったけどアルを悪く言う人間はほとんどいなかったよ
なんか…不思議な魅力があったんだよ…上手く言えないけど

アルの言う事やる事は度を超えて馬鹿げてたけどその全てに本物の凄味があった

アイツは全てにおいて誠実で真剣だった

例え端から見たら『悪ふざけ』としか思えないような行為に対してもね


だからアルがああやって路上で歌を歌うって言った時も何の疑問も抱かなかったし
みんな心から応援してたよ」



そしてしばらく間を置いて
「アイツは…いつも自分の居場所を必死で探してる感じだった」
と付け加えた



亜龍は路上に立つ時必ず胸に『Super Half Breed』と書かれたTシャツを着用し
歌は母親に敬意を表し全て日本語で歌われた

しかしその内容は彼の夢の話同様余りにも不可思議で

受け取ろうとする人間は誰も居なかった



ある一人の女を除いては


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