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海老日記
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2007年07月17日(火)
伯爵長編・カンテラ伯爵と透明人間Z・4


 透明人間っぽい女の子、佐々木女史になんでこちらを見てるのか? と質問されて、僕はどう答えようかと少し首を傾げた。

 正直、変な格好してるなーと思ったからである。
 ゴシックな格好(たぶん、ゴスロリとは違うんだと思う)をした大学生が食堂でカレー食ってたら奇異の眼で見るだろう。

 しかし、正直にそう言っては相手を怒らせてしまうんじゃないだろうか? そういう常識的な回答が頭に浮かんだので「いや、特に。たまたま」と答えることにした。


 ただ、そこまで思い至るのに三秒くらいかかってしまった。

 その三秒は彼女には僕が言い訳を考えていると思わせるに十分な時間だったらしい。

「嘘くさい」

 言われてしまった。まあ、嘘だもん。
 こう言う時は正直に、オブラートに。

「いや随分とお洒落な格好だから」
「変だと思ってたんでしょう」

 いえ、透明人間みたいだとか思っていました。
 しかし、そのまま言ったら僕がイタイ子になる。
 というか、この人はどうして見ず知らずの僕にこんなになれなれしく話しかけるんだろう。
 最近の女の子って、こんなにフランクなのか?

「伯爵こそ、その格好随分とお洒落やん」
 作務衣が?
 ああ、でも最近の女の子は変わったものやゲテモノを可愛いとか表現するからなあ、と捻じ曲がった女性観の僕がぼうっとしている時間も、言い訳を考えている時間と思われたのか、佐々木女史(その当時は名前など知らなかったけれど)は会話を打ち切った。

「じゃあ、またサークルでね」
「はい、それでは」


 ううん、うまく会話できなかった。
 しかし、僕はあの子と同じサークルに所属していたっけ?
 でも、『伯爵』という僕のニックネームを知るくらいだから、そうなのだろう。
 実はあんまり人の顔を見て話をしない僕はけっこう友人の顔でさえよくわかっていない。もしかしたら、知らないだけで、同じ団体にいる人なのかもしれない。そういうの、頓着しないし。






 しかし、疑問。
 その当時、カンテラ伯爵はまだサークルというものには所属していなかったのだ。
 あの人は、一体何のサークルの話をしていたのだろう。