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2007年07月18日(水) ■ |
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伯爵長編・カンテラ伯爵と透明人間Z・5 |
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なんだか、話の脈絡もないけれど、つまりこれは僕が大学一回生になってすぐの話なわけだ。
その当時まだ文芸創作サークル海老銃というもののことも知らずにのんきしてた一青少年で、ヘルレイザー鎌足だのリルリルだのなんてことを日記に書かなくちゃいけないような不思議の国の住人でもなかったから、変わった女の子にあだ名を呼ばれても、なんだかいぶかしむだけだった。
気持ちの悪い子だなあ、と勝手に思っているだけで(まあ僕も、人のこと言えるほどまっとうな男の子でもなかったけれど)だからそれで終わりだった。
はずなんだけれども。
「よう、伯爵」 振り返ると、知らない人だった。 「これから授業?」 「いえ、今日は終わりで、これから晩御飯の買い物に行こうかと」 「今日クラスの飲み会やろ?」 そうだっけ? っていうか、あなた誰? 「じゃ伯爵よろしくな」 「はあ……」
「伯爵おはよう」 「おはようございます」 「なぜにそんな丁寧語?」 「そういうキャラで売っているので」 「ちょっとウケルんだけど」 そんな言葉使う人初めて見た。
「伯爵、次の教育心理学概論ってテストいつだっけ」 僕その講義とってないんですけれど。
といった感じで、見知らぬ人に最近できた伯爵というあだ名で呼ばれることが増えた。 なんだ? 僕はそんなに有名人か?
と思っていたら、新しく友人になった教育学部の海老原という男が教えてくれた。 「ああ、俺のクラスに伯爵ってあだ名の奴いるぜ」 「マジで?」 「マジで。ついでにお前と顔似てる」 そういうことか。 つまり、あの透明人間っぽい女の子も、教育学部なのか。
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