夢見る汗牛充棟
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2000年03月07日(火) 心象風景


「心象風景」








岩石の森に邪な塊が棲む

塊の口は禍の礫を吐き飛ばし

悪意ある眼差しは朱に光る

身体の内よりどろりと滴る

毒は溢れ 川のように流れ

かつては樹のある森だったが

水と緑は呪いに枯れ

毒を含んだ砂塵の中に今や

そびえたつのは忌々しい

岩石ばかりだ



何故 塊はおもてとおのれを

同じく強く激しく投げやりに

憎悪し呪詛の調べを放つのか

世界が汚らわしく厭わしいのは

喰い喰い 臭気を吐き出す

塊が汚したせいだ 自らが

汚らわしく 厭わしいのだ

見れば遠く 彼のひとの森は

今なお 青々とうつくしい

ここは

寒く荒れた岩石と吹き荒ぶ風

棘だらけの地に 転び転び

削がれゆく塊は 思考を手放し

いたづらに 憎しみを重ねる

このような世界に誰が置いたのだ!



あらゆる根源の微粒子が

大気に散漫に漂うならば 塊は

愛の賛歌を紡ぐことができた

喜びのためにうたうことができた

友愛のために織ることができた



だが おれは迷わず 呪詛を吐いた


恵 |MAIL