夢見る汗牛充棟
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愛する土
ちいさな生は
足元の土を選べないので
ここに種をまいたと思う
頑丈な暴風壁を築けないので
風が吹き荒れるなか
ふたつの腕で土を庇っている
それは愚かしいことなのか
ちいさな生は
たまさか立った土を愛すると思う
苦しんで土を耕し
まいた種がひ弱な芽を出すを見る
その喜びは誰のものだ
ちいさな私がここに立つ
私があちこちに立っている
ちいさな生は
足元の些細なものを愛しむと思う
根を絡ませ合う隣人ごと
些細なものを踏みにじられ
覚える怒りは不当なものなのか
ちいさな生が愛する土の上を
巨人が歩いて行く
足裏の破壊を感じることがない
巨人が整った構図を求めふと
美しくないと思う山の形を削り取る
削り取られた土に生はなかったのか
暮らしのなかで
愛してやまない
おおきいものや
ちいさいものを
理不尽に蹂躙される
守りたい土の上に傍若無人に
醜い跡が彫られるのを
微笑んで見守ることが誰にできるのか
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