夢見る汗牛充棟
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群青
ごらん
ここに咲く青い群生は
すでに温もりをうしない
凍えた血のような花たちだ
もの思わぬように揺れながら
悲しみと痛みが匂い
不吉で忌まわしく
かけがえなくうつくしい
空にかざせば空にまぎれ
海に浮かべれば水にとけ
そのくせ常におれを飾りながら
甘い声をして
ねえ 空と海へゆこう
とねだるのだ
苦痛も 快楽も
呪いも 祈りも
根源も 終末も
すべてひとしく混沌となり
選びとれはしないスープに
沐浴する具が人間ならば
おれは何に救いを請おうか
最初の空気とともに
はじめの種は吸い込んだ
一粒のあおが年月を重ねて
発芽し小さな花を咲かせた
摘んでも摘んでも
絶えず咲き続け蔓延し
歓びの溶液の中に
さらなる種を落とすだろう
耳を塞ぎ何に救いを請おうか
おれには養分が残っている
生きるように生きるうち
群青がいずれ境界を侵す日に
囁きに掻き回されて空の
両眼を閉じればいいが
その時耳の穴から
零れる種にお前は
決して触れては
いけない
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