夢見る汗牛充棟
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2000年03月17日(金) 食卓

食卓






”ようは世の中は

喰うか喰われるかです

気をつけましょう”

そう言ったのは誰でしたか

石の碑を建て子供を集め

教え続けるでしょう

”ここに刻まれた名を

銘記しなさい”

彼は自らを焼いて

食卓の皿に載せました

”愛とこれを名付けます”

けれど本当は

例外なく全員がそれとなく

箸やフォークや小皿を手に

彼が予熱したオーブンの

扉を開き自ら入って行くのを

待っていたようでした

けれど目盛りをいじり

スィッチを入れはしません

沈黙の中で後姿を見守っていたのです

群れのほとんど大多数の眼差しと力

全員が申し訳のように

彼の美しく得がたい精神を讃えて

涙しましたが

結局のところ

こんがり焼きあがった彼は

菟肉の芳香をはなち

食前の祈りの後

銀のナイフで切り分けられ

香ばしい肉汁を滴らせる

食い物になって

涎をしたたらせ待ち受ける

人と人と人を

満足させたのでした







恵 |MAIL