夢見る汗牛充棟
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夜と家
たとえば このひとはここに住みながら 扉には鍵をかけている 窓のほんの隙間から飛び込む蝿と 日がな一日呼び鈴の ふるを待ちわびながら けれど静寂に安堵しながら
たとえば 壁のうち暗がり怖ろしくて ここに潜む鬼をはらうため 過剰な灯りをともしながら 放射する光に眩みながら ひとは両目を覆い横たわる 疲れているが 深く眠りたいのだが闇は いやとすすり泣きながら
たとえば 暗がりの中では 闇の粒が影絵を描きながら 澱み 流れ 溜まりながら うねるそれは見開いた目の内側で 咆哮する異形のものにかわりながら ひとを喰らおうとしている 影法師がほうほと笛を吹きながら ほとほと扉を叩く憂鬱な音
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