夢見る汗牛充棟
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2000年03月27日(月) 風とわたし

風とわたし






ちいさくない手と

不器用な指をして

おおきな足と

せっかちなつま先

身体はがらんどうで

すうといきを吸えば

胸がふくらむような

一日をくらし



いとなみのひとつ

心臓と血液

願わくば

風をすみずみまで

ゆきわたらせ



無数の透明な泡を

思い浮かべ

これら わたしの内なる

とびきりうつくしいものは

風でできていて

風に還ってゆく



ぼんやりした頭は

虚ろにばかり拡散する



ねばつく濃度から逃れて

わたしはひたすら

薄くなりたい



風のようになれたらいい

それは

祈りによく似ている



風に流れる雲のように

わたしはひたすら

薄くなりたい

粒子でできた身体の

あらゆる隙を通り抜け

わたしは希薄になってゆく



ゆるやかな天蓋

足のうらに星

頭のうえに星



あいだをすりぬけてゆく

きょうも風を見送り



風が

髪を揺らして

往き過ぎるときは



夢からさめたように

いつもかなしい



恵 |MAIL