夢見る汗牛充棟
DiaryINDEX|past|will
風とわたし
ちいさくない手と
不器用な指をして
おおきな足と
せっかちなつま先
身体はがらんどうで
すうといきを吸えば
胸がふくらむような
一日をくらし
いとなみのひとつ
心臓と血液
願わくば
風をすみずみまで
ゆきわたらせ
無数の透明な泡を
思い浮かべ
これら わたしの内なる
とびきりうつくしいものは
風でできていて
風に還ってゆく
ぼんやりした頭は
虚ろにばかり拡散する
ねばつく濃度から逃れて
わたしはひたすら
薄くなりたい
風のようになれたらいい
それは
祈りによく似ている
風に流れる雲のように
わたしはひたすら
薄くなりたい
粒子でできた身体の
あらゆる隙を通り抜け
わたしは希薄になってゆく
ゆるやかな天蓋
足のうらに星
頭のうえに星
あいだをすりぬけてゆく
きょうも風を見送り
風が
髪を揺らして
往き過ぎるときは
夢からさめたように
いつもかなしい
|