夢見る汗牛充棟
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2000年03月30日(木) うたもどき

うたもどき



硝子の向こうの空を誉めるように
言葉の数珠がうつろにふれ
意味を指折り数えながらふるえ
その知らぬ音がさびしいとなった
生まれてきたのにさびしいと


わたしが削りとっているのは
血肉ではなくて薄い木くず
儚くて軽くて脆いもの
一夜明ければほどけてしまう
糸で連ねた音のかりそめ
それらはいつも息するたびごと
そわそわとわたしを遠ざかる


硝子の向うの空を誉めるように
冷たい壁に手をあてればこの日
とうとう空に触れたのだといった
かたく平らな手ざわりはそらのあお


その知らぬ音がかなしいとなった
生まれてきたのにかなしいと


恵 |MAIL