夢見る汗牛充棟
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うたもどき
硝子の向こうの空を誉めるように 言葉の数珠がうつろにふれ 意味を指折り数えながらふるえ その知らぬ音がさびしいとなった 生まれてきたのにさびしいと
わたしが削りとっているのは 血肉ではなくて薄い木くず 儚くて軽くて脆いもの 一夜明ければほどけてしまう 糸で連ねた音のかりそめ それらはいつも息するたびごと そわそわとわたしを遠ざかる
硝子の向うの空を誉めるように 冷たい壁に手をあてればこの日 とうとう空に触れたのだといった かたく平らな手ざわりはそらのあお
その知らぬ音がかなしいとなった 生まれてきたのにかなしいと
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