夢見る汗牛充棟
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2000年04月07日(金) 伸縮

木々の声を聴いて一日長く生きる
堤を歩き散る花や新緑を目にし三日長く生きる
世の中はけっこう美しいと思える夕方には
春の風はけっこう心地が良い
けれど夕べにはスナック菓子をむさぼり喰らい
十日短く生きようと思う
夜更け酒精を流し込み一月人生を縮めて悦に入るのだ
だってどうして明日目覚めなければいけない

読みたい本がいつまで生きる理由になる
ピアノは相変わらずうまく弾けない
死ぬまでに弾きたい曲があるのに
指はちっとも動かない――酒を飲んだら尚更に
どこまでもわたしの魂は見苦しい

木や草は美しいと思う
草むらで向こうを見ていた弓なりの猫の背筋も美しかった

本を読める幸せのために生きている夜と
生きているから生きてるだけの昼と
苦痛がいやだから生きているあわい
我慢比べだと思う今日とあるがままにいようと思った昨日の
何が違っているのだろう

曖昧な明日がこわい
言葉を喰って生きられたらと思う
孤独がこわいけれど人間はもっと恐ろしい

古い地層に眠った石ほど強くなれたらいいのに

(20070426)


恵 |MAIL