夢見る汗牛充棟
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2003年02月05日(水) ほへ〜の朋友

【歩兵の本領】 浅田次郎 講談社…だっけ。

なんちうか、山本周五郎さん系…?(いや、全然違うな)

山本周五郎さんはとても好き。美しい。真似できませんが。
短編どれもこれも好きですが、女の人がよいです。武士もの好きだ。
きれいでつよくて。「人情」「武士」「武士の妻」に抱く美というか
憧れが結晶化して形になったような。


話が反れた。
【(男泣き)と(男の情)と(男の連帯感)ちう三種の神器が
眩しくも不可解な軍人もの】
って言ったら怒るだろうか。

軍隊もの、男の世界ものには一種独特な匂いがある訳で。
あちゅくりゅしー(熱苦しい)絆と血と汗と涙。
横の連帯感と鬼の上司がふと見せる荒々しい優しさ。きらりっ。
おおう、おりゃああんたに一生ついていくぜ!!

読みやすい短編連作。
語り口は多分、淡々としているのですけど。
ん〜、わたしの知らない世界、って感じでした。
が、おそらくこれも閉塞した世界の美を語っているのかなぁ、
とか勝手に考えてみる。


関係ないけど【海軍めしたき物語】は面白かったなぁ。
なんて思い出しました。後半は怖いんだけど。
めしつながりですが、【ショージ君の料理万歳】も面白かった。

昔、軍隊に入っていたおじさんをほろり、とさせるノスタルジイ。
父は戦後入隊してたらしいが、「あんなに殴られなかった」
と言っていた。実際のところはどうなんでしょう?

父から子供の頃によく聞かされていた話といえば、
いわゆる「昔話」(即興なので毎回異なる)と自分の「昔話」。


雀だか鳩の卵をひたすらとって食べた。
自分のおにぎりは学校に着く前に食べちゃったので、金持ちの子の弁当とって食べた。
鳩とって食べた。フナとって食べた。
用水路で釣りをしてどでかい鰻をとったので、帰ってから喰おうと思っていたら、
じいさんが蒲焼にして喰っちまった。
近所の家の鶏の卵とって食べた。隣の畑から芋とって食べた。
自分ちの畑からとうきびとって食べたら、ばあちゃんに殴られた。


とっての漢字は文意で判断してください。

食物に苦労している年代ですので、食に対する執着というのは計り知れないものが
あるようです。蒲焼の話はそうとう悔しかったようで、十回以上聞いたように記憶
しています。食い物の怨みだけは買わないようにしましょうね。

そんな父が語る自衛隊といえば、要約すると【美味い物喰わせてくれる場所】
幼い頃、寝物語にふんふんと聞いていたのは、自衛隊でどんな飯がでたか。
どんな美味しい物がたくさん食べられたか。曰く。

キャラメルをもらった、大きい羊羹をもらった。
クリスマスには七面鳥がでた。ビフテキというものを食べた。
カレーライスを食べた。ケーキも出たetc…。


たとえ雪中行軍の話だろうが、必ず「そこで食べた●●は美味かった」
と締めくくられるわけで。これらを聞かされて育った私はどうも、自衛隊を
私のお奨めウマい店100選か何かと勘違いしている節がありまして。

【歩兵の本領】を読み終えて…え〜。美味い物出てこないじゃん(不満)
と、はきちがえも甚だしい感想を抱いたのでありました。


恵 |MAIL