夢見る汗牛充棟
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2003年03月21日(金) たわごとたわけ

ゆるゆると汗ばむ背中に
少しの空気の冷たさを感じ
前に置かれた電気ストーブの
裏側で首に悪寒が絶え間ない
本日は桜が花開いたらしい
もうじき花の宴に酔いしれる筈が
憂鬱そうに大儀そうに
テレビの電源を押しに這いずる
別に見たいわけでもない点滅を眺め
後ろ暗い女は宇宙管理機構の
エージェントに抹殺される
地球人を思いながら呆けている
もちろん公序良俗に反し
調和宇宙の治安を乱す
邪悪な生物として一括りに
根絶されるのである
パソコンの画面にむかい
憂鬱なまま憂鬱な繰言を重ね
打ち並べますます泥沼の中を
海豚のように泳げる訳もなく
生憎の金槌は上と思う方に手を伸べ
ただ沈んでいくしかない
気分転換の試みとして
明るい言葉を並べ展開してみる
夢希望幸希愛と平和友親愛可能性光
こういう時の単語どもは
ただの線の集合体に成り下がる
形の骸でしかなく無味乾燥で栄養皆無
幼い頃に恐怖の館という娯楽施設に
入ったのだったが
行き着いた先のラスボスは鏡に映った
おのれの顔だったりして
ふざけるな、と当時のお子様は憤りを
覚えたものだった
この夜にふと思い出してみると
陳腐だがそれだけに真理であったのか
苦笑いするような薄ら寒さだ
もそもそと起きだし
雨が降ったら困るとベランダから
干しっぱなしの洗濯物を取り入れ
ついでに空を見る 黒い雲が見える
星は見えない 向いの家の外灯が邪魔だと
悪態をつく己の部屋もこうこうと明るい
そしてくしゃみを数度重ねて窓を閉じる
あすこの堤の桜はどれほど咲いたのだろう
本当は布団に入って眠ってしまいたいが
放蕩者の眠りの神は何処を散歩中だろう
だらだらと憂鬱な夜の時間は
遥か頭上を牛歩のように進んでゆく


恵 |MAIL