夢見る汗牛充棟
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2006年07月19日(水) |
天人五衰 豊饒の海(四) 三島由紀夫 |
新潮文庫 購入
読了
ようやく、最終巻まで読了。 長かったなぁ……。次は春の雪の映画でも見てみるかなーとか 思いつつつらつらうだうだと感想を述べてみるべし。
本田さん……ああ本田さん本田さん。 芭蕉さんにインスパイアされて一句ひねっちゃうぞー(←アホの子)
つみつみと1〜3巻で築き上げてきたものが最終巻をもってがらがらと 崩れ落ちていく音が聞こえました。ああ本田さんー。
でも面白かったです。 特に一挙に崩壊へ向かう終盤の流れは怒涛のようでした。
関係ないけど、地元がというか近所が出てきたので興味深いです。 小説の描写と今があんまり変らないところが、また面白し。
それはそれとして、すっかり老年の本田さんは、とことん呪われて いるようでむにゃむにゃ……。あの精神のありようは、青年期の体験に よるんじゃないかと思えるけれど、本田さんの自己認識でははじめから、 生まれながらにそういう人であるらしい。 清顕と遭おうが遭ってなかろうが、本田さんはゆるぎなくこういう人生 を歩いて、こんなに荒んだ(ようにみえる)余生を送ったのか? どうなんだろう。かなり疑わしいなと思う。
絶対的な傍観者として生まれついたなら、その自覚そのままに 美しいものに触れさえしなければ安穏な人生おくれたんじゃないかと 思うと、もうため息しか出なかったり。
結果的には自分で選んだ道だけどさ。
四巻の転生者たる透さんは、ふてぶてしさで本田さんに及ばず 一般的な物差しを必要としない揺ぎ無い自己完結さで絹江さんに 遠く及ばなかった。ああなるしかなかったんだなと思うと気の毒すぎ。 本当は絹江さんみたいになりたかったんじゃないだろうか。 本田さんは鉄壁の理論武装(?)で他人の言葉を跳ね返すし、絹江さんは 聞きたい言葉以外は聞こえないし。それに比べれば普通の透さんは ぱりんと割れるバリアの如くに慶子さんの攻撃の前に無防備でした。
黒子があったばっかりに、年寄りの悪趣味な道楽で人生をぶち壊しに されたわけで、本田さん罪深い。でも、本田さんも壊れてんだ。
ラスト、どうとればいいのか悩むけれども、最後の最後まで月修寺に 行かなかった本田さんは、あそこに行くと幻想が終わるって多分知って いたんだろう。門跡は、わかっていて呪いを解いてしまったんだろうな。 解かれて幸せかどうかは知らんけど、(慶子さんが透にしたことも 一種の呪いを解く行為だったと思うんだけど)それと同様に呪いを解かれた 本田さんにももう何にも残っていないと思った。
面白いながらも、胸の重たくなるような読後感でしたとさ。
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