夢見る汗牛充棟
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2006年08月13日(日) |
ギリシア哲学者列伝(上) ディオゲネス・ラエルティオス |
岩波文庫 33−663−1
加来彰俊訳
図書館で借りた。上中下の三巻のうちの上巻。
ディオゲネス・ラエルティオスさんは、三世紀頃の人らしい。 だから紀元前の哲学者さんは立派に大昔の人ですね。
上巻では「万物の始原は水」と言ったタレスさんから始まって 三十九人の賢人や哲学者について述べてられている。 多分当時のさまざまな資料からその人に関する記述をいろいろ 抜書きしたもののようです。
学究的、学問的というよりもむしろ好奇心のままに面白いネタ 集めてみました。さあ、腹をよじって笑うがいい! という感が ひしひしとします。
各哲学者の個々のへ理屈、面白い言動、奇矯な振る舞い などの尋常でない、変な人っぷりを面白がる方面に力が入って いるような感じを受けました。
ついでに、著者さんは、哲学者たちへいちいち詩を捧げたり していて、けっこうな茶化し屋さんです。
各人の発言については、読んでいるといろんな人のところに 同じ文句が出てくるので、誰かがうまいこというと、それは いろんな人が言ったことになるものらしい。 どこまで信じていいかもわからない感じですが、愉快な本。
上巻で印象深かった人。ソクラテスとプラトン以外。
◇ビアス プリエネの人
訴訟の弁護にきわめて長けた人だったそうな。
曰く 「人を愛する場合いつかは憎むことになるかもしれぬつもりで愛せよ。 ――――大抵の人間は劣悪だから」
「神々については存在しているのだと語ること」
「何か良い事をしたらそれは神々のおかげにすること」
いかにも弁護士らしい、実務家らしい物言いだなと思って、好き。 「存在を信ぜよ」とか「神々のおかげである」じゃないのが
◇ペリアンドロス コリントス人
僭主……なのは関係ないですが。 妻を殺したり、息子を追放したり、側妻たちを殺したり 神に貢納する黄金が足りなくて、見かけた女達の装身具を全部 奪い取って間に合わせた、とか。 思慮分別に欠けて暴虐な人。どこが賢者!? と思ってしまう。
死に様がふるっている。
二人の若者にある道を指示し、夜にその道を通って出会った者を 殺して葬れと命じ、さらに別の四人にその二人の若者を追わせて 彼らを殺して埋葬することを命じ、さらにもっと大勢にその四人の 始末を命じておいて、自分はその道を通って二人の若者に殺された んだそうな。
埋葬場所を誰にも知られたくなかったらしいですが、それにしても 迷惑極まりないじいさんです。
曰く 「静かにしていることはよいことだ。性急さは危険である」 「利得は醜い」「民主制は僭主制に勝る」 「快楽は失われるが名誉は不滅である」
…………本当に言ったのか?
◇エピメニデス クレタ人でクノソスの生まれ。
父に言われて野に羊を探しに出かけ、道を外れて洞穴のなかで 一休みと眠り込み、そのまま57年間眠りこけた強者。
三年寝太郎は足元にも及びません。世界は広い。
とりあえず上巻だけ借りのは正解だった。 多分三冊まとめて借りていたら、挫折していたです、きっと。
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