夢見る汗牛充棟
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2006年11月12日(日) |
プラネタリウムのふたご いしいしんじ |
講談社文庫 なんとなく読みたくなって購入。読了。
悲しくて厳しいけれど、きれいな物語だと思う。滑稽でもある。 珠玉のファンタジーってこういうのを言うのかな、と。
読んでいて涙ぐむこと、それ自体が現代人には癒しだと思うし。 読後感は救われたような清々しさも残って悪いものではなかった。 でも悲しい。悲しくて胸が重たくなる。
騙される無知は罪悪だというのが現代の風潮だけれど、その中で だまされる才覚、という言葉が重たかった。
だまされない人間には救いも癒しも訪れないのか。 虚構やまやかしや建前を信じなければ安らぎはないのか。
宗教も、呪いも、世界の善意も、他人の優しさも、信じた人にしか 享受できない。享受できていると信じられなければ嬉しくなれない。 騙される才覚がないから、信じるものが見つけられないのか。
それでも、「どんなに痛くても事実を選ぶ!」といってまやかしを 拒絶する物語も多い。それも多分正しいんだろう。
結局、一方と他方なんだろうかと思います。難しいなぁ、と。
ともあれ、この本にひろがる世界は心地の良いものでした。
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