夢見る汗牛充棟
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2008年01月03日(木) |
薔薇の名前 上・下 ウンベルト・エーコー |
東京創元社 河島英昭:訳
購入したもののずっと積読だったもの。 何故購入したかというと、修道士ものを探していたため。 先に、映像作品の方の薔薇の名前を見つけて見た。その後、原作購入。 映画と原作は別物だろうと思って興味がわいた。
ようやく読了。
……といっても、すっきりしたーというより敗北感を味わう。 難解で知力が足らんよ、出直しといでと本に言われたような気分です。 頭が疲れたので、また時間を置いて再読してみたいです。
下巻の解説を読んで、解説書の多いことに驚く。 謎めいたものは、すべてつまびらかに、まる裸に、無防備に してしまわないと気がすまない、パスカヴィルのウィリアム修道士 みたいな人々がこぞって挑戦してるってことですよね。
殺人事件・秘された図書館・異端・宗教と政治・見習い修道士の恋 ……様々が平行して語られて濃くて面白くてやたら疲れた。 キリストの清貧についての論争とか、キリスト教の部外者の私には 滑稽だったけれど。笑えるけど笑えない。 キリストが財布持ってるか持ってないかで人が死ぬんだなぁ。
苛烈な異端審問官のベルナールが一人勝ちだったなと思った。 正しい正しくないは置いておいて。
居残り組みが際限なく欲しがったせいで、なにもかもなくなった気がする。
◇書物に対する偏愛と過度の所有欲とは、やがて病に高じて、人をも殺しかねない。
◇書物は書物について語る場合の珍しくないことが、それどころか 書物同士で語り合っているみたいなことが、私にもわかった。〜中略〜 文書館はいっそう巨きな不安の塊りのように見えた。どうやらそこは 何百年もの長きにわたって、ひそかな囁きの場であり、羊皮紙と羊皮紙 が交わしてきたかすかな対話の場であり、文書館は一種の生き物であり 人間の精神では律しきれない力の巣窟であって、多数の精神によって 編み出されてきた秘密の宝庫であり、それらを生み出した者たちや媒介 した者たちの死を乗り越えて、生き延びてきた
◇書物というのは信じるためにでなく、検討されるべき対象として、 つねに書かれるのだ。
あの文書館に入ってみたいです。読めないけど。
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