「隙 間」

2005年08月14日(日) 恐山報告

青森市内から車で三時間弱。
霧がかった木々の間を抜けた途端、硫黄の匂いが鼻を突く。
「霊山恐山」
日本三大霊場の一つにして、最も彼岸に近い場所と言われる。
車から降りる。
伊勢神宮の時のような、プレッシャーは無かった。
「日本三大霊場」がひとつ高野山の時のような緩やかな緊張感も無い。
出雲大社の時のような、温かい存在感も無かった。
「ん、行ける」
特別なプレッシャーも何も無く、足を踏み入れる事が出来た。
場内の配置はシンプル。参詣の寺部分と、地獄巡り等の部分が左右に並んでいる。
天気は曇り一時雨。
観光地化されている他の寺社仏閣とは違い、地味に真面目な霊場。
のんびり全部を回っても一時間くらいで済むかもしれない。
至る所でカラスがこちらを見つめいている。
深呼吸をして、首の後ろ、うなじの辺りから「氣」をぬく。
「無用心か?」
たぶん、何も無いだろう。
自身、霊感だの霊媒体質だの、恐怖体験だのとは、全く無縁だから。
「生半可な気持ちで恐山に入山するべからず」
と、いろんな人が口を揃えて言う。
一方、観光バスでドカドカと興味本位の集団が土足で上がりこんでくる。
不思議な光景だった。
地獄巡りや極楽浜の風景よりも、こちらの方が不思議だった。
デジカメのストラップを留めている金具が、
カメラを構えようと手を上げた瞬間、
何のはずみか、折れて地面に落としてしまった。
液晶の表面保護のアクリルが割れただけで済んだ。
帰りの道すがらも何事も無く、無事帰還。
恐山の宇曽利湖は、不思議な綺麗さだった。
アクリル絵の具を水に溶いたようなグラデーション。
自然美の不思議に満ちていた。


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