| 2008年05月31日(土) |
わたしの遠野物語〜序〜 |
目が覚めると、そこは遠野でした……。
はい。 衝動に従ってました。 何故か、今回の作品のためにと思い立ち、高速バスやら宿やらの手配をすませておりました。
柳田國男さんの「遠野物語」が生まれた町で、以前からこの「遠野」という町は来たかったのです。 河童、座敷わらし、オシラサマ、オクナイサマ、迷い家、山男に山女など、たくさんの民話が古くから語り残されている町です。 柳田國男さんの著書に含まれている物語だけではないので、いわゆる「語りべ」と呼ばれる民話語りの専門家さんたちの話を聞きたかったのです。
もちろん、それだけではありません。
その物語が生まれ、語り継がれてきたその地を、その空気を、感覚を肌で感じたかったことが大きいです。
昨夜十一時に上野を発ち、朝七時に遠野駅前に到着。 天気予報が雨、だったのですが雨は降らず、この状態のわたしにレンタカーは危険なのでレンタサイクルにしました。車だと一日で十分、めぼしい所は回れてしまうのです。なので、雨が降ったら車、降らなければ自転車と決めていたのです。
駅前の観光センターで自転車を借り、意気揚々と……。
「バコン、バコン」 「?」 「ガタンッ、ガタンッ」
パンクしてました。 引き返して別のに乗り換え、ふとタイヤを見てみると、へしゃげてました。
すわ、と再び引き返して、
「空気入れ直していいですか」
担当のお姉さん「菊さん」がやろうとするのを「僕が」と制止し、シャコーッ、シャコーッ、と空気入れをひたすらピストンさせます。 自転車なら、パンク修理からチェーン交換まで自分でやるのが我が家の教育です。
「あの、新しい自転車をだしましょうか」
入れ終わったタイヤを、ぶにぶに押して確かめながらも首を傾げていたわたしを見て言った菊さんに、わたしは、
「そっちでお願いします」
と。
降水確率九十パーセントを曇りでとどめてくれた遠野の町に、
わたしを受け入れてくれてるのかしらん?
と思っていたのに、町の妖かしたちがイタズラをしかけてきてるのかも、と思わず苦笑いが。
こうして、わたしの遠野物語が始まりました……。
「四キロまでは徒歩圏」
都内ではそれが当たり前だったわたしですが忘れていました、大事なことを。
起伏の激しさと、自転車は久しぶりに乗るのだということを。
使う筋肉がちがうのです。 そして風と、ぱらつき始めた小雨。
ペダルを漕ぐ。 腿の付け根がピリピリ痛む。
ペダルを漕ぐ。 尻がジンジン痛む。
ペダルを漕ぐ。 ふくらはぎがピキンッとつり始める。
こうなればもう、闘い、です。 そしてまずは……河童が相手です。 ということで、
「カッパ淵」
に行きました。 この小川にはたくさんの河童が住み、人々を驚かしてイタズラをしたと言われています。
河童の祠と、木の枝の竿にぶら下げられたキュウリが……。
しばらく竿をたれてみました。
……ちっ。 まさか乗り込んでくるとは思わず、慌てて身を隠したか。
不戦勝です。 たぶん。
そして、
「デンデラ野」へ。
ここは昔、六十歳を越えたお年寄りを、労働力にならない、と食い扶持を減らすためにそのお年寄りを捨てにきた場所です。 捨てられてもまだ畑仕事はできる、と身を寄せあって暮らし、畑仕事をしにこの野におりてきていたのです。
そして、
「伝承園」へ。
まずは遠野の名物料理「ひっつみ汁」と「けいらん」で腹ごしらえ。 「ひっつみ汁」は地鶏でとった出汁のすいとんのようなもの。そして「けいらん」は米粉の白玉に餡がつまった、鶏卵というよりうずらの卵くらいのもの。
なかなかなものでした。 腹がくちくなったところで園内へ。 目玉は、千体の「オシラ様」がまつられているお堂です。 「オシラ様」は、簡単にいうと養蚕の神様、です。 未来を「お知ら」せする神様でもあります。
ここでプチ情報。
宮崎駿監督作品「千と千尋の神隠し」で、大根の顔形で出演されてます。
さあ、痛む尻と足に鞭打ちつつ、次は、
「卯子酉(うねとり)様」へ。
縁結びの神様です。 ……さあ、次へゆきましょう。
「五百羅漢」へ。
二百年余り前に東北地方を襲った大飢饉の犠牲者の冥福を祈り、自然の花崗岩に羅漢像を彫ったものの群れです。
山林のなか苔むした岩のあちこちに、羅漢が彫られた岩がごろごろと。 この山林で、もしや「迷い家」に導かれるのでは、とほのかな期待が……。
わたしにはまだその必要がないようです。
さあ、雨が小雨からややしっかりとしたものに変わってきました。 回りたかった遠めの所は大体回りきり、それでは自転車を返しにと、お菊さんの待つ観光センターへ。
返しがてら、お勧めの晩御飯の店を教えてもらいました。
実は、遠野はジンギスカンが有名なのです。 しかと頂きました。
美味かったです。
ホテルで「語りべ」さんによる語りべの会があり、会の前後に、個人的に色々と話をさせていただきました。
お時間をいただきまして、本当にありがとうございました。
明日も、いや明日こそ、語りべを片っ端から聞きまくる予定です。 しかし、今日はよく頑張りました……。
尻が、腿が、痛いです……。
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