| 2008年08月11日(月) |
「なぎさの媚薬〜」と愛しいこと |
重松清著「なぎさの媚薬5 霧の中のエリカ」
脱力……です。 どうして、こんなにも胸をエグるのでしょうか、重松作品は……。
「なぎさ」シリーズの五作品目。 どうしようもない絶望や寂しさを抱いた者、さらに「なぎさ」自身に選ばれた者、だけが、取り返したい、過ちを正したい、過去に戻りやり直すことができる。
ただし……。
ただしそれは自分自身についてのことでは決してなく。
家がお隣同士の幼なじみの少女エリカ。 彼女が誰にも言えない酷い傷を負っていたことを知らずに、ただ「見ざる言わざる聞かざる」でいた少年。 彼女を救いたい。 と思う前に、荒れすさんでゆく表面上の彼女の姿に怖じ気て何もせず、何も言えずにいた彼。 やがて彼女が多数の男に暴行を受けた後にガソリンで全身を焼かれた無残な姿が発見されたことを知らされた彼、高校三年になっていた少年は、「なぎさ」と出会い、少女の誰にも言えるはずのない、全ての、彼女に襲いかかった悲劇を見せつけられる。
あなたの現実は何も変わらない。 だけど、彼女を救ってあげられるかもしれないのは、あなただけ……。
少年は、彼女が傷つくことを防ぐことはできなかった。 だけど、彼女を救うことは、できた……のかもしれない。
……。
ものすごく、微妙な、不確かな感覚なものだけれど……。
「セックスはとても寂しくて悲しいもの。互いが、からだのたった一部分でしか、ひとつになれないのだから」
少年が少女を救おうと彼女を抱きしめた後に、なぎさが彼にかけた言葉。
もう学校になど普通なら行けるはずもないのに、制止する親を振り切ってそれでも行こうとした少女の手を取り、幼い頃のように強く手を握ったとき……。 からだの一部分がひとつになるより、ずっと、互いがひとつになれている気がした……。
という感覚。
きれい事の、偽善、だということは、重々わかっている。 男であって、女であって、そうである限りはきれい事だけで済むはずもない。
だけど。
からだで、ではなく。 こころで、ひとつになれる感覚を、ときには思い出すこと。もしくは感じること。
それが、とても愛しいこと、なのだと思う。
ひとつ、思い出してみませんか?
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