谷崎潤一郎著「鍵」
谷崎世界全開です。 谷崎的女性主導型盲目的妄想的恋愛世界。
五十代後半の夫が、ひと回り若い妻との夫婦生活をさらに得心せんがため、日記を書き始める。 妻に密かに盗み見させるために……。 閨房(つまり夫婦の営みごと)について夫が希望や不満があっても、古風な教えを叩き込まれてきた妻は耳を塞いでしまい、ただひたすら受け身で一定で、それなのに満足しきっている様相がない。日記を盗み見させることで、その全てを伝えよう、と。 読んでも読んだふうな素振りは一切見せない、と見越して、またそうするように書いておく。
妻もまた、日記を書く。 夫に盗み見されることを踏まえた上で……。
最中のときは灯りのない暗いなかであるべき、裸体を晒すなど恥ずべきこと、とする妻。 年齢のわりに美しい肌の妻の全身を、くまなくわがものとしてまじまじとながめたい。 なによりも、美しく愛しい足をねぶりたい夫。
歪んで、真っ直ぐで、深くて、刹那で……。
……女は、男よりも、
「強か」
であり、だからこそ男は女を求める……。
谷崎特有のフェティシズムと、
きっかけをえて、女がみるみる変貌を遂げてゆき、男というものを支配してゆく
「悪女」
に……生まれ変わってゆく。
悪女と、それに魂を奪われ、支配されることを至福とする男。
この物語は、すべて、夫と妻のそれぞれの日記によってのみ、構成されています。
三島由紀夫の「レター教室」を偏愛の世界に特化させ、濃密にし……。 まあ、谷崎世界が苦手な方は、しんどいかもしれないけれど(汗)
日記を書くのは、
新しい世界への扉の鍵
になるかもしれません……汗
|