「隙 間」

2008年09月23日(火) 「鍵」と鍵

 谷崎潤一郎著「鍵」

 谷崎世界全開です。
 谷崎的女性主導型盲目的妄想的恋愛世界。

 五十代後半の夫が、ひと回り若い妻との夫婦生活をさらに得心せんがため、日記を書き始める。
 妻に密かに盗み見させるために……。
 閨房(つまり夫婦の営みごと)について夫が希望や不満があっても、古風な教えを叩き込まれてきた妻は耳を塞いでしまい、ただひたすら受け身で一定で、それなのに満足しきっている様相がない。日記を盗み見させることで、その全てを伝えよう、と。
 読んでも読んだふうな素振りは一切見せない、と見越して、またそうするように書いておく。

 妻もまた、日記を書く。
 夫に盗み見されることを踏まえた上で……。

 最中のときは灯りのない暗いなかであるべき、裸体を晒すなど恥ずべきこと、とする妻。
 年齢のわりに美しい肌の妻の全身を、くまなくわがものとしてまじまじとながめたい。
 なによりも、美しく愛しい足をねぶりたい夫。

 歪んで、真っ直ぐで、深くて、刹那で……。

 ……女は、男よりも、

「強か」

 であり、だからこそ男は女を求める……。

 谷崎特有のフェティシズムと、

 きっかけをえて、女がみるみる変貌を遂げてゆき、男というものを支配してゆく

「悪女」

 に……生まれ変わってゆく。

 悪女と、それに魂を奪われ、支配されることを至福とする男。

 この物語は、すべて、夫と妻のそれぞれの日記によってのみ、構成されています。

 三島由紀夫の「レター教室」を偏愛の世界に特化させ、濃密にし……。
 まあ、谷崎世界が苦手な方は、しんどいかもしれないけれど(汗)

 日記を書くのは、

 新しい世界への扉の鍵

 になるかもしれません……汗


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