「隙 間」

2011年03月05日(土) 悩みではなく問題である

「悩み事」はありますか?

ありません。

わたしはそう答える。

しいていえば、悩みが思い浮かばないことが、悩みである。

深夜の甘木アイドルグループの番組で、

「悩みではなくて、それは解決してゆくべき問題で」

というコがいたのである。

わたしは、崖っぷちでカラカラと足下の破片が落ちてゆく音まで聞こえた。

しかし。

親友だと思ったメンバーから「そうじゃない」と返事されたコがいたのである。

わたしはそっちの崖っぷちから、ガラガラと岩と一緒に落っこちていったのであった。

もとい。

悩みの話である。
わたしが悩みがないということは先のコが言ったとおりであり、解決する術が見当たらないと思ったら、それは直ちに、後で見つければよい、と割り切るからである。

つまりは、すべてが自分自身のみで済ませられる範疇にしか、わたしがいないからこそ出来ることなのである。

これがおそらく、家族、伴侶や子どもやらを持つようになり、自分自身のみでは済ませられないところで暮らしているひとらは、そうはゆかない。

解決法はみつかるが、その通りにはいってくれない。
いってくれるまで待ち続けるわけにもゆかない。

ある意味。
わたしはまだまだ甘い日々の中を暮らしている。

問題。

先日、その大問題が浮き彫りになった出来事が、あったのである。

緊張や無理から半ば解放されたような状況で、身体が勝手に油断してくれている最近なのである。

飯田橋駅のホームを、歩いていたのである。
ギンレイの帰りで、いつもなら歩いて帰るのだが、どうにも、保ちそうにない。

ホームは線路に沿って大きく弧を描いてある。
列車との隙間が、すぽんとひとが落っこちてしまいそうなくらい空いてしまっているところがあるくらいである。

ああ、眠い。

まだ列車が来ないホームを、ほよほよと先頭車両の乗り口の方へと向かっていたところ、

列車が到着します

おぉ、はじを歩いてたらいかん。

右に三歩寄れば、線路に落ちる。
黄色の「注意換気ブロック」の上を、歩いていたのである。

あぁ、左へ。
ブロックの左へ。

右肩が下がりだしたのである。
自然、右へ進むことになる。

違う。
違う。
左だ。

抵抗するも、結果、直進するのが関の山。

ホームは、進行方向左へ、大きく弧を描いてある。

足下から、ブロックの不快感が、消えた。

視界は、しっかりと、自分がどこに向かっているかを、とらえているのである。

おいおいぉぃ。

なら、止まれ。

止まれ止まれ止まれ。
ひだりひだりひだり。

ひた……。

……。

うむ。
こうやって、死の直前まで、死ぬこと自身への恐怖に怖れおののくことはなく、ただ生きよう、と思うしかしない。
これは、死を前にしようとした人間の、まだほんの一面にしか、すぎない。

まだまだ、他の面だって、ある。

わたしは、車にはねられたり、事故に遭ったことがないのである。

轢かれた瞬間、痛みは感じるのだろうか。
すぐさま真っ暗になるのだろうか。
それを味わおうとするには、列車はデカすぎる。
賠償金とか、誰が払える。
払えるわけがない。
しかも身体が満足で残るはずがない。
納棺の際に、できればきれいな姿でありたい。

「ゥ、フアァーン!」

わかっとるがな!
危ないのは!

はっ。

第三者からの刺激には、反応しやすいのである。

右肩が、軽くなる。
背中が伸びる。

おっとっと。

つい、と左に、白線の内側に、足を進める。

「危険ですので、黄色い線の内側を、お歩きください」

アナウンスに首をすくめる余裕まで、取り戻す。

貴重な、体験であった。

わたしは少なくとも、死ぬことを目指していない。
生きることを、明日のことを、目指している。

ということをも、同時にいえるのである。

普段からそのようなことを考えたこともないのだが、だからこそ、それもまた貴重な体験、なのである。

この問題は、解決のしようが、まさにないのである。

あるとすれば、普通の仕事をする生活をやめることになる。

それはさすがに、まだ無理な話である。

今週、舞姫に手を出す隙すらなく寝てしまうこと半分。

当然、支障なく日中を過ごすのは難しいのである。

であったから、土曜は気をつけなければならない。
やらねばならないことを、やっておかなければならないのである。

日曜は、保険にあてるわけにはゆかないのである。

というはずだったのが。

舞姫どころか、明かりも忘れ、寝てしまったのである。

午前零時過ぎから八時過ぎ。
十二時前後から夕方五時過ぎまで。

それ以外の時間しかないのが、わたしの問題ということなのである。

解決法は、ある。

山火事が燃え広がらぬよう、樹を切り倒す。

そのような方法しかないが。

消火ヘリコプターでは大火の火元を消すことが出来ないのが、道理なのである。


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