「リッキー」
をギンレイにて。 フランソワ・オゾン監督作品。 シングルマザーのカティは、娘のリザを朝小学校にバイクで送り、工場で働き、リザを迎えにゆき、という単調な日々を送っていた。 新しく同僚になったスペイン人のパコと出会い、結ばれ、やがてリッキーが産まれ、家族四人の暮らしがはじまる。
カティはパコに子守を頼み出かけ、帰ってみるとソファでリッキーを膝に抱きながら、疲れて眠りこけていたパコの姿があった。
一緒に帰ってきたリザと微笑ましく思っていたのも束の間、風呂に入れようと服を脱がしたリッキーの背中にあざができていた。
パコがぶつけたか落としたかしたに違いない。
パコは、懸命にリッキーの子守をしていた。 慣れない手つきでミルクを作って飲ませ、オムツも腰までうんちがつき広がっているのを、ちゃんときれいに拭いてやり、だからリッキーもパコの膝に抱かれたまま眠りこけられていても暴れずにだあだあしていた。
しかし、あざはなくなるどころか、濃くひどくなってゆく。
カティはパコを疑うしかできなかった。
わかった。もう、いい。
パコは、自分を信じようとしてくれないカティの元を出てゆく。
しかしやがてリッキーのそのあざから、羽根が生えはじめる。 皮膚を突き破って、まるっきり手羽先のような羽根が。
パタパタと元気よくはばたいたりする。
やがてその羽根が立派な翼になってゆき、空を飛び回るようなる。
「未確認生物発見」
と、リッキーが飛んでいるところを人々に見られ、一躍マスコミに追いかけられるようになってしまう。
一度、こっそりリザの小学校にその後を心配したパコが訪れていたが、
リッキーは元気だよ
とリザはパコに答えただけだった。
それがテレビでリッキーのことを初めて知ったパコは、カティらの元へ戻ってくる。
家族四人で、新しい家で、新しくやり直したい。
パコの本当の素直な気持ちだった。
そのためには、リッキーを隠し続けるにはもう限界の今を逆手にとるしかない。
取材料を条件に、取材に応えよう。
カティもうなずき、とうとう、ばれてしまったとき以来初めて、マスコミの前にリッキーを連れて出てゆく。
リッキーは、足に紐を結び、そして翼を隠していた上着を脱がされる。
無垢な笑顔で、晴れ晴れとした顔で、翼を広げ、抱かれたカティの腕の中から空に、飛び立ってゆく。
平凡なカティとパコとリザの元に現れた翼の生えたリッキー。
赤ん坊の彼は、家族になろうとする三人にとって、天使なのだろうか……。
ここは、是非、娘のリザに注目してもらいたい。
平凡な日々にうんざりだとばかりで、あまりかまってくれない母親のカティ。 パコと出会ってからはパコばかり。 そしてリッキーが産まれればリッキーばかり。
パコが訪れてきたときも、羽根が生えはじめていたことは黙っていた。
パコが帰ってきたら、私だけじゃなくなってしまう。
リッキーが世間で騒がれ、混乱状態で疲れ果てていたカティに、リザは、
私がいるわ
と母親を慰める。
リッキーが憎いわけではない。翼が生えていたとしても、弟としてかわいい。
観客としてリッキーに翻弄されるカティを追いかけてしまうが、リザのことも、追いかけて観て欲しい。
さて。
休日出勤で一日を使ってしまったが、残り一日をどう使うべきか迷ってしまった。
今日もまた出勤して大分県の仕事を手助けするか、というのには、昼を過ぎてしまっていた。
しかも、だいぶわたしの中にオリが溜まってきているのがわかる。
ならば寝て過ごしてしまえというのも、違う。
読み物や書き物をしようにも、どうにもとっちらかってしまう。
このキャパシティの小ささには、ただただ閉口させられてしまう。 開き直りが、直りたくなくなってきている。
今まで、一生のものだからと、肩を並べて、つまりそれは正対しないということだが、ぼちぼち歩いてきた。
しかし。
気付くとわたしは追い抜かそうとしたり、そのわたしの肩を、抜かされまい、置いてかれまいと、むんずと掴んでくる。
なあ、相棒だろう?
ピーターパンの影とは正反対である。
ジダンのマルセイユ・ルーレットでも、メッシの足に吸い付く切り返しでも、ヤツは置いてけない。
まるっきり、引きこもったロジャーのようだ。
「Another day」ばかりをがなっているだけの。
What you own?
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