2011年05月24日(火) |
ウニのとげはGっとう妄想する |
わたしは、ウニのとげよりもデリケートな生き物である。
昨日、ノブオくんによる心ない風評被害を回避せんと、代償にオモチロイ作品をあれやこれやと選出しようと試みようとしたのであった。
しかし、試みようとしただけで、とげとげはポロポロと抜け落ちてゆき、まるでマリモのように、ビロードのあられもない姿丸出しと成り果ててしまったようであった。
朝、定刻通り目が覚める。 全身がマリモになったようなわたしは、もさもさと起き上がりシャワーを浴びたのである。
熱い湯を浴び、わしわしと洗いこすっても、もさもさ感はなくならない。 むしろ水を得たギョのごとく、さらに重く濃くわしゃわしゃとなってゆく。
これはアレだ。無理だ。
ガッキーが、うなずく。 湖底をふよふよと転がるように浴室を出、脱いだユニクロの首のところがヨレだしているスウェットの上下をまとい、連絡を入れる。
前略、古墳さま どうやら風邪のようです。 ヘタレてお休みいたします。 草々、孟徳。
竹さま ……チーン。 了解しました、お大事に。
古墳氏はその洞庭湖より広いこころであたたまる返事をくれたのである。
古墳氏のご厚意には申し訳ないが、風邪ではないのである。
先日、鍋で湯を沸かそうとコンロの火にかけ、かんかんに空焚きさせてしまったのであった。 空焚き防止機能(センサー消火)付きの方で助かった。
消火センサーのアラーム音に目を覚ましたわたしは、すっかり油断していたのである。 かんかんになった鍋を見て、これが本当の「なべやかん」かん、とオモチロイことを言ってみる。
どうやら最近の寒暖差が、ここにキタらしい。 入社しておそらく初めての「病欠(?)」である。 もうあとは、枕に身を委ねるだけである。とっぷりとお八つの時間まで寝てしまっていた。
はたから見れば、不謹慎な「サボり」に見えるだろう。
起きて出来るならば、外に出て光を浴びたり、時計をリセットするようにしておきたい。
いや。 ただじっと部屋に引きこもっていたくはないという意地である。
これはきっと、同居人がいたら理解不能、不可解不愉快な行動に映るだろう。 しかし、ひとりであるから誰の目をはばかることもない。
のこのこと街へ出る。 行く先は決まっている。
「さぼうる」
である。 「ラドリオ」にしようか迷ったが、やっぱりここは「さぼうる」でさぼうるとしよう。
入口で白髪のマスターが迎え入れてくれる。 ここで夕方の時間だと、「お茶かお酒か」を一旦訊いてくるのである。
わたしを見たマスターは、確信した様子で訊いてきたのである。
「お茶ですね」
ええそうです、わたしもしたり顔で答える。
これは心地好い。 そうしてわたしは、独りの時間に没入する。
オモチロイ本を、人前で読んではいけない。
いくら薄暗い店内でも、ニヤニヤ、プクククク、という顔くらい丸見えである。 植木を挟んだ隣席の女子が、彼氏と席を交換したのは、もはや仕方がない。 その彼氏も、気丈にわたしの方を見猿、聞か猿、言わ猿の精神で貫き通していたようである。
「机上の妄想」
わたしの座右の銘に加えることとしよう。
なかなかよい発見にご満悦なわたしは、これ以上不審者ぶりを発揮してマスターに迷惑をかけてはならないと早々に席を立つ。
これだけ馬鹿らしくて軽快でオモチロイと、呆れてあいた口にペンペン草が生えてきそうである。
最近自分のG党ぶりの薄っぺらさに気付き、居住まいを正さねばと思っていたのである。
今季交流戦から、とにわかぶりを露呈しないですむよう、その数日前から、スポーツニュースで結果と順位くらいは把握しようと平素努めていたのである。
スポーツニュースでも観ておさらいしよう。
わたしのマイヤフーのスポーツ欄に、なぜだか結果が書かれていない。
また故障か電波障害か、やさしく、ブンブン、振ってみる。 変わらない。
はて、昨日たしか澤村が好投するも、勝ち星を逃がしたはずである。
昨日?
月曜日は移動日だから試合はないはずではないのか。
その時点で、にわかぶりがにかわなみであることを痛感する。 「セ・パ交流戦」である。 セ同士ではない。 ましてや開幕が遅れた分のマッチメイクだって配慮されたりされなかったりの懸念だってきっとある。
なるほど、ここまでの自己分析を終えると、念のためG党の甘木女史に確認してみる。
やはり交流戦だからじゃないの?
と、しばらくして返ってくる。 こんなことには早く返事をしてくるもののようである。
いや、たまたまさ、とわたしは言い聞かせる。
そしてわたしは、胸の内で強く叫んだのである。
「澤村よ、俺の屍を乗り越えてゆけ!」
と。 しかし、見も知らぬ怪しい屍など、乗り越えるどころか疫病感染しかねないはた迷惑な存在である。
丁重にブルドーザーで地面ごと掘り上げられ、産業廃棄物らと一緒に埋め立てられるか焼却処理されるか、どちらにせよ儚く報われぬ末路をたどるに違いない。
ああ、不憫なり。
せめて「ここに妄想する竹あり」と世に知らしめるべく、札を刻まねば。
半日ほどの惰眠を貪らねばならないこの身なれど、鯉を背負い、だるまをこよなく愛する黒髪の乙女が、お友だちパンチでわたしを惰眠から目覚めさせてくれるのを、妄想の竹林にてひたすら待つのみである。
「竹取りの、起きな!」
と。
うむ、なかなか、である。 妄想はますます迷走す。
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