2011年06月01日(水) |
「マイ・バック・ページ」 |
「なぁんか、やる気がまったくでんなぁ」
古墳氏が、ぼやく。 今日は早く帰ろう、という気の抜け具合である。
「それじゃあ、わたしは早くあがりますから」
ん? 何かあんのん? と尋ねてくる。
今日は「一日」です。 だから? サービスデーです。 なんの? 映画です。
そう。
定時過ぎにチャカチャカとあがり、劇場に行こう。
と、決心したのである。 観てみたい作品は、二つに絞ってあった。 ひとつは前評判も実際の評判も、社会的に大絶賛の作品である。
本音ではそちらに行きたかった。
しかし天の邪鬼が騒ぎだし、「カッコつけ」てみて、こちらを選んでしまったのである。
「マイ・バック・ページ」
を丸の内TOEIにて。
松山ケンイチ、妻夫木聡、忽那汐里出演、山下敦弘監督作品。
予告編だったかで見かけた時は、ノスタルジックかつ情熱的で、期待できる作品だと思ったのである。
主演の二人ともが、実力派として申し分ない。 山下監督は、わたしは観ていないが「青春コケッコー」で評価が良かった記憶がある。
元朝日新聞社記者・川本三郎のノンフィクションを映画化したものである。
東大安田講堂事件の直後、新聞記者の沢田は革命家を目指す梅山と出会う。
先輩記者は梅山を「ニセもの」だと見抜くが、沢田は梅山を信じ、取材を続ける。
「ニセもの」が「本物」になるところを。
梅山は沢田に、そう打ち明ける。
「なぜ彼を信じてしまったのだろう?」
本人にもわからない。
ただ。 夢(未来)と現実を理想と社会に置き換えて、自分が何をやりたいのかわからないやるせなさをぶつけるしかなかった。
作中に、
「ちゃんと泣ける男が好き」
という台詞が出てくる。
「男は泣いたりなんかするもんじゃない」
と笑う。
しかし「ちゃんと泣ける男」とはつまり、核心から目を背けず、理屈で弁護するでもなく、自分をむき出しにできる男のことである。
沢田演じる妻夫木聡が、ラストにボロ泣きする。
しかしそれが、わたしには「涙そうそう」の「にいにい」に見えてしまい、長澤まさみちゃんはどこにおるがや? と思ってしまった。
うむ。 あらためて正直な感想を言うと。
ナタリー・ポートマンの狂気の方を、やはり選べばよかった。
学生運動だ右だ左だ赤軍だ浅間山荘だ、というのが主なテーマではないことはわかっている。
社会派の青春作品らしいことも。
残念過ぎる。
この当時の、その時代の、その世代の、独特な「熱さ」が、感じられない。
それこそが「ニセもの」の表現なのだ、と言われたならば、わたしは「ふうん。あ、そう」と流しておしまいにしてしまおう。
立松和平原作を劇中劇の形で映画化した「光の雨」という作品があり、萩原聖人、裕木奈江、山本太郎らが出ている。
こちらこそ、テーマが違うので比べるのは適してないかもしれないが、「生々しい熱さ」が、ある。そして「残酷さ」も。
「マイ・バック・ページ」
松山ケンイチ、妻夫木聡の二人のファンであるならば、観てみてもよいかもしれない。
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