「隙 間」

2011年06月19日(日) 「太陽の坐る場所」

過去を語るものは、自分が存在したという確固足る証明を求め、
未来を語るものは、明日が必ず訪れるものだと信じて疑わずにいるから。
未来が過去に変わる刹那にのみ今は存在しうる。
今は常に存在し続けることはない。

だから人は今を今であり続けようと前を見続ける。

辻村深月著「太陽の坐る場所」

高校卒業後十年が経ち、クラス会を毎回欠席し続けている人気女優となったキョウコを、皆がなんとか出席させようと画策します。

それぞれの思惑は、過去に生まれたものであったり、今沸き立ったものであったり、これからの自分に必要だと確信していたり。

アマテラスの天岩戸のお話をモチーフに、それぞれの同級生たちによって語られてゆきます。
誰かの人生の主人公は本人であってそれは当たり前のことなのですが、とても不思議な気持ちにさせられました。

特に登場人物たちが呼び合うその名前が、とても大切な物語の鍵になっているのです。

「太陽は暗闇に閉ざされることはない。あるだけで光に満たされるのだから」

解説の宮下奈都さんが、「掻き乱されてしまう」と辻村深月さんの作品に対する感想を書かれていますが、まさにその通りでした。

さてとても複雑な気持ちになってしまいました。
昨日、プロ野球の巨人戦の試合結果を家に帰ってからみてみたのです。
見事に勝っていました。内海投手は左のエースとして九勝のトップ。嬉しい孤軍奮闘、といったところでしょうか。
見事に勝ってもらえたので、わたしは今日も試合経過をみないように、気にしないように努めました。
天の岩戸に籠ったアマテラスのように、アマテラスの物語を読みふけって過ごしていたのです。
そしてようやく先ほど試合結果をチェックしたのです。

大勝していたのです。

これまでなかなか勝てず不運のルーキーとなっていた澤村投手が勝ててとても嬉しい気持ちになりました。だけど対戦相手の西武・牧田投手は、個人的に是非頑張ってもらいたい選手なのです。ううん複雑です。
千葉ロッテの渡辺俊介投手についで目を奪われてしまったアンダースローのフォームの美しさ。アンダースローの投手はもはや絶滅危惧種といっていいでしょう。生き延びてゆくには成績を残さなければなりません。

周りを見ても自分と同じ姿は見えず。
折れず挫けずにマウンドに立ち続ける。
信じるのは誰でもない自分自身。

負けるためにマウンドに上がる人はいません。
勝敗はマウンドに上がったものだからこそ与えられる結果なのです。

さあ、マウンドへ、です。


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