「東京公園」
をギンレイにて。
都内の公園で家族写真を撮っていた光司はある日、一組の母娘に目が止まりシャッターを切った。
その時、彼女の夫である初島に難癖をつけられ、さらには、「妻を尾行して欲しい」と頼まれてしまう。
天気が悪くない日はほぼ毎日、都内の公園に散歩に娘を連れて出掛けるという。 しかも行く先の公園をメールでわざわざ知らせて。
初島の妻は、光司が幼い頃に亡くした母親の面影そっくり。 しかし光司本人は気になっているのにそのことには全く気付かない鈍さ。
それを指摘したのは、光司のルームメートだったヒロの元恋人だった美憂。 元というのは、ヒロは事故で亡くなっているからだ。
しかしヒロは、幽霊となって何故か未だに光司と同居(?)を続けている。
「光司にだけ見えて、話ができるなんて不公平だ」
美憂はそう言いながら、光司(たち?)の部屋にしょっちゅう顔を出す。 美憂はさらに、光司の気付いていなかった重大なことを、知らせる。
「お姉さんは、光司のことを愛してるんだよ」
姉の美咲は、父の再婚相手の娘で、血の繋がりはない。
「だけど姉弟だから、それは許されない、って言い聞かせて、光司を弟として見守ることにしたんだよ」
ズバズバあっけらかんと光司に諭す美憂。
「お姉さんと、ちゃんと向き合って見たこと、ある?」
光司は姉の美咲をモデルに、写真を撮ることにする。
いい加減に逃げずに、ちゃんと向き合うために。
そして、初島に頼まれていた初島の妻と娘の尾行も、断る。
原作では、「奥さんが待ってるのは、初島さん。あなたが来てくれるのをずっと待ってるんです」というところなのだが、映画ではそれをはっきりと言わない。
ただ、
妻が浮気してるんじゃないかと不安になっている「格好悪い姿」を妻に見られたくない。 やけになって昼から酒を飲んでる姿なんか見せられない。 そんな「格好悪い」俺なんか、妻に合わす顔がない。
と、じたばたしてるあなたでも、奥さんは、きっと待っている。
仕事で忙しく、ついつい妻の前で肩の力を抜いて何気ないことを話し合うことを忘れ、くだらないつまらないことを格好悪いことだと決めつけていた。
「出来ない姿」が格好悪いのではなく、「出来ないと言えないこと」が格好悪いことなのだと初島は気づいてゆく。
「公園」ののどかな光のなか誰かが誰かを待っている姿は、あたたかくやさしいものなのである。
この「東京公園」は、天真爛漫、ちょっと変わった愛らしい美憂を榮倉奈々が見事に演じている。
ビタミンウォーターのCMから、わたしは好きである。
そして、光司の姉・美咲を演じているのは、小西真奈美さんなのである。
クールにも見え、しかし柴犬の仔犬のように愛くるしくもなる彼女は、わたしはやはり大好きなのである。
二人とも鹿児島出身ということで、次回のわたしの旅先は、やはり鹿児島にしよう、と決意してしまう。
わたしの旅先は、このようにして決められてゆくのである。
まずは、都内の公園もなかなかよいところが多いので、そぞろ歩きでもしながら楽しみたいものである。
「榮倉奈々や小西真奈美は、道におちてたりしませんからね」
そんなことはわかっている。
帰り道の途中どこかにそんな機会はないかともらしたのは、現実から逃避したい深夜一時の職場ならではの妄言である。
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