2011年11月07日(月) |
「BIUTIFUL」 |
「BIUTIFUL」
をギンレイにて。
バルセロナで我が子たちを養うために、裏社会の仕事で生計をたてているウスバル。
コピー商品の製造販売。 その労働者としてセネガルや中国からの不法滞在者たちの世話。 仕事の斡旋。
しかしそれは、そこで暮らしてゆくためにそれしかない人々のために必要なことであった。
ウスバルは仕事こそ裏稼業だが、思いやりある人間であった。
しかし、彼は突然、癌によって「余命二ヶ月」を宣告される。
「死ぬ前に、きちんと整理しておきなさい」
我が子と、躁鬱を抱えている元妻と、そしてウスバルが世話している不法滞在者たちのために、何ができるのかあがく。
しかしそんなウスバルに、次々と過酷な事態が襲いくるのである。
冬に工場の地下室に雑魚寝で暮らさせられている中国人たちのために、ウスバルはストーブを買ってやる。
しかしそのストーブのせいで、全員が一酸化炭素中毒で死んでしまう。
粗悪品だと知りながら、俺がそれを買ったんだ。 俺が殺したも同然だ。
麻薬の売買をさせていたセネガル人の男が、ウスバルの忠告を聞かずに警察が警戒している街区で売買を続け、逮捕され強制退去させられてしまう。
そんな仕事をさせるからこんな目に合ってしまった、とその妻に責められる。
ウスバルの思いやりが、ことごとく彼を責める結果になってゆくのである。
そして、ウスバルは震える声で娘を抱き締める。
「お前たちのために、なにをしてやればよいのかわからないんだ」
綺麗なことと美しいことは、違う。
さて本作品の監督は、菊地凛子が体当りの演技を絶賛された「バベル」の監督である。
「バベル」は大したことない、あえて観るべき作品ではない、と思った。
そして今回。
ううむ。 やはり、あえて観てほしいとまではなかなか言い切れない作品であった。
しかし。
財政危機が報じられたスペインのバルセロナにおける、観光ではわからない現実が、描かれている作品ではある。
日本で身の回りのことだけで手一杯なわたしには、遠い世界の話に感じてしまう。
だからこそ逆に。
身近な現実と親く肩を並べあっているように思えたりもするのである。
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