「隙 間」

2012年01月15日(日) サンザシの樹の下で」ゲロゲーロ

「サンザシの樹の下で」

ギンレイにて。

チャン・イーモウ監督作品。
文化大革命下の中国。
都会に暮らす女子高生ジンチュウは、農村学習で訪れた山村で、地質調査隊のスンと出会い、互いに惹かれあってゆく。

スンの父は共産党内で半思想的だと注意人物の疑いがかけられて査問中だったりと、インテリながらリベラルな家族に育てられていた。
ジンチュウは都会暮らしだが貧しく、共産党の思想にそぐわない態度や生活を他人に見られたらたちまち生活できなくさせられるような、ギリギリの家庭に育てられていた。

つまり二人の恋は、許されない恋だった。

主演のチョウ・ドンユィが、素朴で頑なで、そして不器用で、自分の気持ちに自分が振り回されるジンチュウを、素晴らしく演じていた。

チャン・イーモウ監督作品のヒロインは、これまでの皆、何千人からのオーディションで選ばれ、これを機にブレイクしてゆく。

時代はやはり中国か。

作品が内容として優れていたか、などとはどうでもよいのである。



さて。

困った事態になった。

「忙しい忙しい」というのも、この仕事をやっているからには観念しなくてはならないところがある。

幸か不幸か、わがチームのトップ下である大分県とわたしは独身者だから、家に帰ろうが帰るまいが、休もうが休むまいが、ひとりの勝手さでなんとでもなる。

誤解してはいけない。

わたしは、減俸されたとしても「帰って」「休んで」いなければいてもたってもいられない人間である。

勿論、わたし以外の方々はワーカホリックというわけではなく、責任感をごく当たり前に持っているだけの普通の意識の持ち主な方々にすぎない。

トップの火田さんが、わたしをこっそり呼んだのである。
後ろには大分県が付き従っている。

なんだなんだ、わたしの手抜きさ加減が目にでもついてしまったのか。そんな手抜きはしていないつもりだぞ。それは大分県らのきっちりさ加減にはかなうまでもないが。

火田さんの顔が、かなり重たげなのである。

「あのね、お願いがあって」

はうっ。
もうちょっと竹さんには頑張ってたくさん仕事をして欲しいの。

「しばらく、早く帰らせてもらっていいかしら」

「勿論、定時以降、てことで」

大分県と、思わずパチクリと目をしばたかせて見合ってしまった。

それはそれは、全然構いません。

「迷惑かかるかもしれないけれど、よろしくね」

こくりと頷くしかない。

火田さんは共働きでお年頃のお子さんがいるのだが、どうやら母親である火田さんがあまりにも家にいなさすぎて問題になってしまったらしい。

塾に通っているはずが、ずっと欠席し、帰り時間も随分遅くなっていたことが判明したらしい。

「ちょっと深刻化しないようにしなくっちゃ、てことになって」
「どうか今はご家庭を優先なさって下さい」

脅すわけではないが、こんなことが当たり前に起こりうる業界である。
それをなんとか防ごうにも、どちらか、またはどれかは、なるようにしかならないのである。

少し仕事の数が絞れたからと、九時十時頃になんとか帰れるようになるかと思っていたが、難しくなりそうである。

いやしかし、皆の誰かが不幸せにならぬよう、ここは協力しなければならない。

浮わついたままの気分も、少しは引き締めなければ。


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