2012.03.10.渋谷BOXX 花の名前「桜」
篠原美也子のライブ(バンド)である。
よくぞいったものである。 今朝の零時をまわるまで、いけないかもしれないと思っていた。
一旦消灯した東京タワーが再び点灯しているのを見ながら駅へ向かい、そして京浜東北線の最終電車を待っているときになって、ようやく、ライブにゆける、と光明が見えたのである。
「ミスターは八時半前に来ない」
虎子さんが、やたらと大声で触れ回っている。
もとより皆に対して、わたしは五分十分の遅刻が普通という印象があり、出向から皆がいる本社に戻ってきた昨年十月から年末にかけては、一度も遅刻せずにやってのけていたのである。
しかしさすがに毎日四時間前後しか寝られない日々が続けば、そうはゆかなくなってくる。
なんてバカな生活をしているんだ。 そんな様子がまだまだ変わらずいつまでも続いているならば、僕はもう、何もあなたを助けようなんてしないからね? というか、出来ないから。
前回も実は、
定められた処方出来る量を超えるから、出すことが出来ません。
と、危うくなるところだったのである。
一ヶ月という縛りを閑語師が、処方日からの換算ではなくカレンダーの月と勘違いしただけで、結局は、無事にまとめて出してもらえて済んだのであった。
結構瀬戸際に寄ってきている。
まだ、時間ギリギリに起きて、ぼうっとしたまま出勤して、五分十分の遅刻で済ませているのだから、なかなか頑張っていると思うのである。
しかし、わたしがそうだと誰にも知らせていないのだから、知らない人は仕方がない。
虎子さんは、それを親切心から声に出して注意をしてくれているだけなのである。
「ミスターは、(こころが)強いなあ」 「強くなんかぁ、ないっす。グラス・ハートです」 「いやいや。こんだけ言っても八時半前にこないでケロッとしてんだから、強いって」
強くなど、ない。
弱いからこそ、弱いなりにそれを守るべく、強くなろうとすることをやめただけである。
とはいえ、虎子さんに余計なところまで触れ回らないでもらうよう、努力だけは心掛けるようにしよう。
そう。 強くは、ない。
だから篠原美也子の歌を聴きに、またこうしてやってくる。
「M78」で、なぜかわからないがゆるんでしまいそうになってしまった。
「afterglow」や「bouquet toss」でも、また。
感動などを篠原美也子の歌からもらえるような、そんなことを期待する年でもない。
ただ表現し続けているその姿を、みたいだけになりつつあるのかもしれない。
朝九時に起き、土曜の午前のうちに洗濯を済ませたかったのにそれもできず。 どうしようもない睡魔に抗っていたつもりが、気が付いたら夕方の四時を過ぎていた。
ライブの開演は五時半。
もう、部屋を出る気力など無いに等しかった。 こころから、にじみ出た。
行かなくったっていいじゃないか。 約束してるわけでもないし。
行って、何がある?
休んでろよ。
洗濯だってあるし。
冷蔵庫の野菜が腐る前に、鍋にでもして処分する方が、よっぽどためになるだろう。
原宿を背にして、体育館、NHKの前を歩いていても、足先は迷い続けていた。
渋谷BOXXの前に着き、開演時間ちょうど。
いつも五分十分遅れてはじまるから、間に合ったに違いない。
チケットを切り、ドリンクを受け取り、まだ照明で明るい会場の中へ。
入口に一番近い、後ろで、上着も鞄もそのままで、暗転してゆく。
何をしに、わたしはここにきたのだろう?
「春色」から「afterglow」へ。
そうだ。 わたしは篠原美也子の歌を聴きにきたのだ。 ステージに立つ篠原美也子の歌を。
弱いなりに明日を迎えるために。 今日もおぼつかぬ身に、昨日や来週までひとりで全部背負いこむのはムツカシイのである。
逆光を背に、当たり前を繰り返しにゆこう。
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