「隙 間」

2012年04月08日(日) 春よ、

桜花繚乱。



であった。

というのは、四月頭にこれを書いていたからである。
それにしばしお付き合い願いたい。



都内屈指のお花見スポットである上野公園が、わたしの家路の途中にある。

しかし、上野公園の桜のトンネルよりももっと素晴らしいところが、近所にあるのである。

それは谷中霊園である。

それはそれは「お見事」なのである。

谷中銀座でつまみの惣菜を買う。
テレビや雑誌で毎回紹介される「谷中メンチ」のサトウさんでメンチを買うのは、素人である。

わたしくらいになると、「いちふじ」さんで買うのである。
こちらはあらゆるマスメディアの取材を拒み、本当に谷中の地元の皆さんのために、旨い惣菜を安価で提供してくれているお店なのである。

やきとり、皮、つくねの串を一本ずつ。
唐揚げを百グラム。
メンチを一枚。

「焼おにぎり」があれば完璧なのだがなかったため諦める。
しかし、これでも五百円でおつりがくるのである。

少し肌寒いので、あたたかいお茶を買って駅の脇の階段を、とんとんとんと上がってゆく。

桜の枝花がわたしを押し潰さんとするように頭上を覆っている。
枝花をくぐり抜けつつ、串やメンチや唐揚げを平らげてゆく。

やはり、この街が好きである。

わたしが、ある意味であらためて歩みだした街である。
そこからまだ飛び出してはゆけないが、ここからなら遠出しても帰ってこられるようなつもりになれるのである。

それは深夜に会社からタクシーで二十分少々で帰れるということも含めてであるが、そんなことは、できれば遠慮したいがこれがまた重要だったりするのである。

三時に会社を出ても、四時には着替えて家で寝られる。
そうすれば三時間睡眠が保てるのである。

こんな自虐的な利点は考えるのをやめよう。
そんなのは、もう、御免蒙りたいところである。

四月からの組織改編で、わたしはBIMチームに残った。

そしてこれまでBIMソフトを触ってきた者たちは、他の二次元のCADチームに移されてしまったのである。

なんということだろう。

しかしチームの長に、親会社でずっとモデリングのルールだとかの研究チームにいた御山さんがやって来てくれたのである。

時々わたしは御山さんに相談や質問をしていた間柄で、くだけた会話もできる。

その御山さんが出向で我が長になってくれ、いったいどのように業務を変えることができるのか期待である。

よし、今のうちに休みの予定をとってしまえ。

そんな勢いで、それには何の意味もないのだが、旅先をちょっと探してみる。

わたしは、何かを持っているのかもしれない。

よさこい祭りの本選最終日に、高知市内で、さらにはりまや橋まで徒歩圏の宿に空きができたのを、見つけたのである。

よさこい祭りの期間は、参加者や関係者、そしてよさこいファンが全国から高知市内にやって来ているのである。

であるから、会場である高知駅に近い宿など、なかなか取れないのである。
一昨年、わたしはそれで室戸岬に宿をとることになったのである。

今年は年が明けてから、勿論宿泊受付は予約日の半年前ころからなのが一般的だとわかっていつつも、三日と開けずに深夜帰宅後、空き部屋がないか探していたのである。


二月半ばになり、いよいよとなるが、見つからない。
それでもあきらめずに、探し続ける。
見つからない。

しかし。

それが。

どうせ無理だろうと諦めていたのが、ひょんなタイミングで見つかったのである。

やはりわたしは、何かを持っているに違いない。

御山さんにお盆休みの前に有給休暇をつけてよいか、聞いてみよう。

「え〜、お盆休みのことでしょう? その頃にならないとわからないでしょう。
それに仕事に支障をきたさないようなら構わないけれど」

至極当然のお言葉である。

ならば、そうなるようにしよう。
そして、わたしがいかによさこい祭りに行きたいか、どれだけ幸せを、生き甲斐をそこに求めているかを、周りの皆さんも含めてアピールしてゆこう。

浅草の人々が三社祭のために一年を過ごしているのと同じである。

わかってくれないはずがない。

まさに日常を積み重ねた先にあるものなのである。


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