ベンチに寝転び見上げた夜空にはバナナムーン。蜩の声も消えて、僕は静かに煙草を燻らす。僕は貴方の事を知らないのに、貴方は随分と僕の事を買被っていた。『皆がそう言っていたよ』恐らく罪のない無邪気な言葉に搦め捕られて、僕は息も出来なくなる。僕は誉められるも、期待されるのも大嫌いです。貴方が買被った人間の、左腕をどうぞ観てみて下さい。自分の存在が他人の中に居るという事実は、僕にとっては恐怖でしかない。