白虎草紙
『遙か』の白虎組についての四方山話、SSなどです。

2005年06月13日(月) 胸が痛むから



美しいから胸が痛むんじゃない
胸が痛むから美しいんだ


家の横の道をまっすぐ北にあがると、
丘の上に大きな白い図書館があります。

そこに咲いていたあじさいの向こうに傾き始めた陽の
光を見たとき、
言葉は何も浮かばないのに胸がとても痛みました。


そして思い出したこのこと。

『「ひとは泣くから悲しいのであり、
物を打ちつけるから怒るのであり、
震えるから怖い」のであって、逆ではない。』

「ことばの顔」鷲田清一 p29 P/B中央公論新社


人は、何かを知覚しても、それに「身体の裏打ち」がないと
味気ない、感情の熱を欠くのだとこの哲学者は、
ジェイムズという心理学者の研究を踏まえて言っていました。


「身体の裏打ち」、それはたとえば
美しい旋律に鳥肌が立つこと、
恐ろしい光景に冷やりとすること。
居心地のわるい空間にいると耳鳴りがすること。

つまり身体は心より遙かに敏感で、
いつも先に美もダメージも受け止めている。


だからこそ自分はあじさいと、その向こうの光に、
言葉を浮かべる前に胸が痛んだのだろうと思います。


きっと絵も音楽もお話も、
何か言葉にする前に胸やどこかが痛むような、
身体が受け止めるような、
そんなものが本当の本物と言えるものなのでしょう。



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桂子 [HOMEPAGE]