勤労に感謝する日。 働いているすべての人にありがとう。
いつもにこにこしていて、元気が良くて、悩みなんかなさそう だった友達。 彼女は銀行の同期入社、わたしより一つ年下。 かおりちゃんは悩みなんか無いよねって言われてそうだよって 答えてた彼女。 彼女は、学生時代に恋人を海で亡くしていた。 そのことを知ったのは入社してから何年も経ってからだった。 銀行で一緒だった11年間、彼女に浮いた話はなかった。 わたしが銀行を辞めてからも浮いた話は聞かなかった。 いまも独身。
彼女のご両親は、お母さんお父さんの順で亡くなった。 わたしが銀行員時代にお母さん、辞めてすぐにお父さん。 彼女は弟さんと二人暮らしになった。 それでも、彼女は元気がよかった。 彼女が泣いたりするのは、見たことが無かった。 彼女が泣くのは、きっと自分のことではなく友人達のことばか りだったのだと思う。
わたしも彼女の明るさにはとても助けられていた。 わたしが銀行を辞めることに悩んでいたときもそうだった。 そんな彼女も何年か前に銀行から転職した。 わりと近い松戸に住んでいるのに、なかなか会えないのだけど どうしているんだろう。
彼女に浮いた噂が無いのはどうしてだったのだろうか。 彼女は、自分が鈍感だからっていう。 まわりもそう思う。 たとえ彼女に行為を寄せている男性がいたとしても、彼女はそ の人の気持ちにまったく気がつかない。 食事に誘われたとしても、一人の女性として誘っているだろう 相手に皆で行きましょうとにっこり本気でそう答えている。
恋人を海で亡くしてから、恋愛に臆病になってしまったのかも しれないねと話し合っていた友人達。 大切な人を失うことを恐れて恋をしなくなったのだろうか。 恋人を亡くし、両親を亡くし、また大切な人を亡くしたらと、 そんな事を彼女は考えているのだろうか。 いつも豪快に笑い、自分は恋愛には鈍感で短気なんだよと言う 彼女の心の裏側にはどんな気持ちが渦巻いているんだろう。
大好きな人には光のようでいて欲しい。 光があれば影が出来る。影は苦悩、闇。 光に向かって歩いているだけでは影の存在に気づかない。 影を見つめ、影が濃いのは光が強いからなのだと気づいたとき、 闇を持っていることを自覚している人こそ、その魂は光り輝く のではないのだろうか。 彼女の影は、どれほど濃いのだろうか。
太陽に向かって生きているようなあなたの闇をのぞいてみたい(市屋千鶴)
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