朝は雨だったが、わたしが出社する10時を過ぎた頃から、雪に なった。そのまま、一日雪。
お昼に自宅に帰って、長靴に履き替えてみたものの、降っている わりには道路につもる気配もなく、結局普通の靴でも平気なのだ った。
退社時間になって、近くのコンビニまでそのまま買い物に出た。 雪の中を傘をさして歩いていると、いつも違和感がある。 ここいらへんの雪は大きくて湿り気の多い雪だから、傘をささず にいると濡れてしまうが、田舎の雪は傘なしでもよかった。
アノラックを着てフードをかぶっていると、雪はアノラックの表 を滑るように落ちていき、濡れることがない。 肩に積もっても、ちょっと動けば落ちてしまう。
中学校の頃は、学校まで夏は自転車、冬は徒歩だった。 雪路を歩くことを考えて、冬は学生カバンではなくナップザック に教科書や弁当を入れて通った。 雪のひどい日は、ナップザックにビニールの袋をかぶせて、更に 防水対策をして通っていた。 吹雪くときは、眼鏡も真っ白で眉毛も真っ白になった。
わたしなどは、まだバス通りを歩いていけたので、かなり楽な方 だったと思う。 山側の村から通ってくる生徒たちは、一団となって雪原を漕ぎ分 けて通ってきていた。 もちろん、アノラックは上半身の防寒具だから、雪原を漕ぎ分け て通う生徒たちは、ほとんどが上下スキーウェアだった。
学校に到着すると、ストーブの回りに色とりどりのスキーウェア が干されることになる。
そんな田舎から、わたしは転校して市街地の中学校になった。 それでも、母と住む市営住宅は市街地の外れにあり、やはり雪の なかを歩いて通った。 雪が降ると必ず吹雪きになってしまう、北西の風を遮るもののな い道を、一人で歩いて通った。
コンビニからの帰り道、ぬれてしまうカバンを見ながら、そうだ こういうときはビニールの風呂敷で包んでしまえばいいんだよな、 とふいに思い出した、通学風景だった。
毎日が投球練習 杉の木をめがけて雪を投げながら行く(市屋千鶴)
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