障害の強い21歳の息子さんを持つお母さんと話す機会があった。 自閉症に加えて、知的障害も強いようだった。 最近の悩みは、睡眠サイクルがずれてしまっていることらしい。 夕食後30分位すると眠くなってしまい、そのまま寝てしまうの で、早朝というより夜中に目を覚ましてお母さんを起こしにくる のだとか。(2時とか) お母さんはというと、寝付く時間は普通で起きるのは息子さんと 同じ時間といった具合なのだそうだ。 息子さんが作業所に行っている時間に昼寝をしてはと言ってみた のだが、やらなければならない家事はやってしまわないと気が済 まないという質だということで、昼寝をする余裕が無いと言う。 お母さんはわたしと同じ50代である。 お母さんが倒れてしまってはと、21歳の息子さんの運動量を増 やす作戦はどうだろうかと、知人達と提案する。 いろいろ大変だなあと思う。
そんなときには思うのだ。 ちゃんと食べて、ちゃんと寝て、元気でいてくれるだけでありが たいのだと。 それ以上を望む必要は無いのかもしれないと。 義務教育である以上、ちゃんと学校に行って勉強もしてくれれば なおさらありがたいが。 ただ、親は多くを望みすぎることが多い。 生まれたときは、ただそれだけで幸せだと思ったのに。
一生に一度抱えし卵あり「生まれる」ことは受動態にて(市屋千鶴)
「生まれる」という受け身の立場から、「生きる」という自発的 なものに転換するとき、そこには存在をしっかりと認めて受け止 めてもらっているという体験が必要なのだろう。 生まれてきてよかったと、この親の子で良かったと、死ぬまでに 言ってもらえれば、母としては最高の幸せなのだと思う。
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