カタルシス
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帰宅すると 家中えもいわれぬ香りに満ち満ちていた。 「?!」 この不思議な香りは何?
「お姉ちゃんおかえりー。ごはん食べるよね?」 どうやら妹が夕飯をこさえていてくれたらしい。
元来「作る」のは彼女の方が得意であり、一緒にいる時は私が「片づけ」係に回ることが多い。…というか、片さないと永遠に片づかないので必然的に私がやるハメになるというのが実状なのだが、彼女の作るものがまた なかなかに美味しいので、このような分業に甘んじているという訳。
利害の一致というものは最強である。
さて、本日彼女がふるまってくれたものは何か。本人に問うても名はなき料理だと笑ってみせる。何はともあれ強烈な香りを放っているこれは一体… 見た目にはケチャップライスのようであった。しかし、この不思議な香りはただのケチャップライスではないだろう。いや、ある訳がない。
使われている食材を吟味してみよう。
まずは米。 常備していた日本米ではなく、長粒米をわざわざ使っているようだ。これのために買ってきたのだろうか? グリーンピース、コーン、サイの目切りのニンジン。 これはおそらくフリーザーにあったミックスベジタブルだな。在り物も利用していると見える。 それから… なんか色々と細かい何かがうかがい知れるものの、その正体は解らず。おそらく留学から戻った時に持ち帰って来た香辛料の類だろう。この奇天烈かつ摩訶不思議な芳香はその何種類かを取り混ぜて使っているに違いなかった。
英国に留学中間借りしていたホストファミリーがインドの家族だったことが2度程ある彼女。初めのうちはその刺激の凄まじさにお腹を下していたそうだが、慣れてしまうとこれが美味しく思えるそうで、別のホストへ移って大人しい料理ばかりの日々が続くと、あの刺激が恋しくなり 結局自分で味の再現を試みる程の禁断症状に陥るのだと言っていた。留学期間最後の1ヶ月はロシアに語学留学していて、インドとはまた違った香辛料に興味津々だったとも。
好奇心旺盛なところは小さい頃から不変の性格だ。 …性(さが)なのである。
味見によそられた料理を目前にひと言。 「何が入ってんの?」 すると、待ってましたとばかりに 妹はニヤリ。 「さて何でしょう♪」
解らないから聞いてるんじゃんよ。と返すと 調味料をしまっている棚の中から缶箱を取り出して曰く、 「この中の8種類を使いました。どれが入っているか当てて下さい。」 私の目の前に缶箱を置く。
見ると缶箱の中には ビンや袋に入った様々な香辛料がびっしり詰められていた。数えてみたら11種、葉や実や粉末や… いつの間にこんなに揃えたのだろうと感心するほどだ。 ちなみにポピュラーなものは別の場所にちゃんと置かれている。白・黒胡椒、七味唐辛子、パセリ、粉末ガーリック、ナツメグ、ターメリック、月桂樹。(…え? 月桂樹はポピュラーじゃない?ローリエだよローリエ、乾燥した葉っぱ。使うでしょ、シチューやカレーや その他諸々に) とにかく、それらとは違うものが 缶箱には詰まっているのである。 私にしてみりゃ未知のものに他ならない。
取り敢えず一口食べてみて 香りを堪能、次に順々に缶箱の中の香辛料の香りを確認していく。 「…これは入ってる」 「これも… 入ってる」 「うーん、これは解らない、保留。」 「…何だか鼻がおかしくなってきたよ、ちょっと休憩!」
なんてことを繰り返しながら、どうにかこうにか7種類のビンをテーブルに並べてみた。 さて、結果は?
「おおー、7個当たり!スゴイね姉ちゃん。 あと1個はやっぱり解らない?」 「…解らない。 ギブアップ。」 ちゅーか、もう鼻が利きません(苦笑)
「タラ〜ン♪(ジャジャーン♪ってのと同じ使い方) 答えはこれ!」 と妹が缶箱から抜き出したのは 乾燥して粒のようになったセージの花。 私が選んだビンの中にはセージの葉があった。
解るかそんなもんッ!( ̄△ ̄;)
と、ひとしきり盛り上がったところで 玉ねぎと卵で即席スープ(本ダシでダシとって醤油で色付け&味付け)を作り、仕上げに乾燥ワカメをぶち込んで 妹のスパイスライスに添え夕飯とあいなったので あ〜る。
嗚呼、姉妹円満。
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