カタルシス
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2004年05月19日(水) |
メイド・イン・ホンコン |
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『ジェネックス・コップ』を鑑賞
久しぶりにまとも?な香港映画借りたな〜… しかも若手ばっかのアイドル映画だよ(笑) まぁ気軽に見られそうだからと思って借りたんだから それで良いんだけどね
と
気を抜いて見ていたら思いの外よくできていて驚いた あれ? 何か面白い かも?? 一体香港映画をなんだと思っての感想だろうね いやいやいやいや 私はこれでも香港電影好き まがりなりにもファンだっつのよ(^^;)
一応主人公と思われる新米刑事トリオ+1に ニコラス・ツェ スティーブン・フォン サム・リー グレース・イップ ギャング役にダニエル・ウー テレンス・イン ジェイミー・オング と香港の若手スターが名を連ね
新米トリオのまとめ役にエリック・ツァン 別のギャングにフランシス・ン(ン・ジャンユー) そんでもって一番の強敵が 仲村トオル(仲村亨) なんて何やら豪勢な顔ぶれなんだわな
そして最後の極めつけには導演監修ジャッキー・チェン 劇中にもカメオ出演 …カメオっちゅーには目立ち過ぎだったけど(苦笑)
近年日本と香港をまたにかけて活動している日本の新興ヤクザ赤虎(仲村)が大量のロケット燃料を強奪した それは極少量でも大爆発を誘発させるに充分な強力なもので 爆弾やミサイルに使用されることから 大規模な武器売買に発展すると予測した香港市警は 赤虎を最大のターゲットとして手配していた
腕利きの潜入捜査官の手引きにより 取引の現場を抑えられた赤虎は消息不明となるが 後日その捜査官宛に爆弾が届けられ同僚家族共々吹き飛んでしまう それは警察に対する赤虎の報復だった
ある夜 香港の一角を牛耳るギャングのボスが何者かによって殺され その弟であるカナダ帰りのダニエル(ダニエル・ウー)は腹心の金牙(テレンス・イン)と共に 兄の残したシマを取り仕切ることになる 彼は不慣れな香港での取引をスムーズに済ますためにと選ばれた赤虎のビジネスパートナーでもあった
一方 血気盛んな若者が訓練を重ねる警察学校で 潜入捜査のスタッフを選びにきたベテラン刑事チャン(エリック・ツァン)は 型にはまったタイプばかりの訓練生に半ば諦めかけていた 彼が欲する人材は 身のこなしが良く機転が利いて有能な それでいて警官にはとても見えない容姿・雰囲気を持ち合わせた者だったが 訓練教官が紹介するのは見るからに屈強そうな 警官らしい警官ばかり
これではとても作戦実行は望めないと席を立とうとしたところへ現れた 3人の落ちこぼれ訓練生 教官の不正を暴露したため 強引に免職を言い渡され その抗議に来たのだった そのやり取りを目の当たりにしたチャン刑事は 彼らしかない!と心を決める
チャンは有能だしベテランだったが その冴えない容姿や持病の癇癪を揶揄されて 警察組織の中ではミソっかす扱いを受けていた 境遇的には落ちこぼれ3人組と酷似している 初めはお遊び半分だった3人もチャンの真剣な取り組みに感じ入るようになり 徐々にチームワークが固まっていく 先に爆弾で家族ごと吹き飛ばされ殉職した捜査官はチャンの同僚であり その仇を打ちたいという気持ちも多分にある この一見ちぐはぐなチームに 殉職した捜査官の妹Y2K(グレース・イップ)が加わって 彼女のハイテクと日本語力が力強いバックアップとなり チームは最強の布陣を得たのだった
殺されたダニエルの兄の兄弟分であるロコ(フランシス・ン)はダニエルを呼び出して「犯人に懸賞金をかけたから半額は実の弟であるお前が持て」と言ってきた 苦楽を共にしてきた兄弟の仇を討とうと思っているらしい 承諾したダニエルは 自分が経営する店で騒ぎを起こしたチンピラに金の運び役を命じるのだが そのチンピラとはダニエルが赤虎に通じていると睨んでマークしていた 潜入捜査中のジャック(ニコラス・ツェ) マッチ(スティーブン・フォン) エイリアン(サム・リー)の3人であった
とまぁこんな感じの展開ですわ 人間模様入り乱れでしょ? ついでに言語も入り乱れ 広東語と英語と日本語がまじゃまじゃになってんのよ 日本語は日本人にしか通じていなかったけれど 英語と広東語はどんなに混ぜても理解しちゃうらしいのは 香港人特有の言語形態かと なのでよくよく聞いてると広東語の最中に突然英語での台詞が入ったり(単語程度じゃないぞ) その逆があったりして大忙しだった
聞き取れた中で面白いなと思ったのが ジャックのことを「阿Jack」と呼んでるところ 頭につく「阿」は親しみを込めて呼ぶときのもので 例えば「兄」が「兄上」だったら「阿兄」は「兄ちゃん」くらいの違い それ 英名にもつけるんだ〜(笑)と思わず感心
仲村トオル演じる最大の敵「赤虎」はニヒルなイイ男に描かれていて 香港映画にありがちな安っぽいただの悪者じゃあない 彼は彼なりの摂理に基づいて ある目的を達成させようとしてる そして恐ろしく頭のキレる人物だ 日本人の姿もよりリアルになってて カンチガイの日本は薄れてきた感じがした でも 和太鼓の演奏と ご婦人方の着物の着方は 微妙に違います ってか笑えるから(爆)
裏のかき合いとか 敵味方で絡まり合った猜疑と信頼が テンポよく描かれていてちょっと驚き 香港のアクション映画でこんなに筋書き凝ってるのって見たことなかったし アクションは「さすがジャッキー」と言わしめるに価する豪快で見栄えのする動きでもって画面を存分に賑わせてくれた サム・リーのコミカルなキャラクターで徐々に積もっていくシリアスな重さを 絶妙なタイミングで空気抜きしていくあたりなんかは巧い そして香港特有なのかジャッキー特有なのか知らんけど ほとんどのスタントを俳優本人がこなしているって 見てて解るのがスゲぇ! 「え? 今 顔ホンモノだったぞ?!」とか「これも本人か??!」見たいな驚愕の連続 だってさーニコラスとか特に超売れっ子のアイドルなんよ? 綺麗な顔してるし 本業は歌手だからライブとかもこなさなきゃならない体な訳じゃん それなのに結構ハードなスタント実演しているんだもんさ…
ジャッキー・チェンがするような極端にスゴいことはないにしても 日本じゃ考えられないレベルのアクションがちりばめられていて アホちゃうか?(汗)って思うくらいにはスゴいんだ 後で特典のメイキングを見てみたら顔も判別できないようなシーンですら自分らで演っていて 恐るべし香港人!!と本気で思った 恐れ入谷の鬼子母神
正直 あなどって見始めた自分を反省した 認めようじゃないか これはなかなか秀逸な作品だ!とね
物語の終盤 赤虎にも新米刑事たちにも「仇討ち」の意志が存在していて さまざまな“復讐”が小さくも大きくも描かれていることが解る このことに何の意味があるのか イマイチ理解仕切れなかったが「争いごとには必ずその発端になったものがある」ってことなのかなぁと 薄らボンヤリ想像してみたのだった
■役者本位な感想■ ニコラス綺麗!美人!さすがアイドルだ!! ※男性です スティーブンはちょっとオッサン化が始まってたな… ジャッキー・チェンがより甘くなったような顔だったけど 若いうちが華だわね サム・リー!サイコー!!激ラブ!!! 決してハンサムな顔じゃないし体型もガリ痩せ型なのに なんちゅー生命力 表情の豊富さ 存在の強さ この人は素でも面白い(インタビュー等) 写真じゃ全然オーラ感じないけど 動いて喋ると超絶に活きる人 しかし今回の役名“エイリアン”(異形)って 一体どんな名前やねん…
ダニエル・ウーはヘタれなキャラがイケてて拍手もの 実際のプロフィールも生まれ育ちが米国って人だから 広東語よりも英語がツルっと出てしまうカナダ帰りの若造って設定がしっくりきてた でも個人的には腹心・金牙役のテレンス・インの方が好き系の顔だったりする …また名前の話をするけどさ「金牙」ってカッチョイイ名前なのに英訳されて「Tooth」ってどうなん? 「トゥース」かよ!「歯」なのかよ?!
仲村トオルは何気にアジア進出中 トニー・レオンとイーキン・チェンが主演した『東京攻略』でも謎の黒幕を演じていたし『ロスト・メモリーズ』ではチャン・ドンゴンと共に韓国映画に主演している 『ロスト〜』は観てないけれど『東京攻略』でもこの『ジェネックス・コップ』でも 台詞は日本語と英語を使っている でも英語はかなりヘタれ… イカした役なだけに失笑が漏れて仕方ないが 国内での活動にある程度見切りをつけて海外に飛び出したって点はすごいと思う それもアジア映画を的にした辺り なかなかのキレ者と見た! そしてまた役名ネタ 赤虎はクレジットで「AKATORA」と書かれていたので英語圏で公開される場合は「アカトラ」と発音されるようだ「レッドタイガー」じゃないの? 意訳だったりそのままだったり不思議だな… ちなみに広東語では「赤虎(セッフー)」「金牙(ガムガッ)」と発音されていた模様 ※自分リスニングなのでツッコまないように
坊主や五分刈りじゃない髪型で見たのが初めてで 最初誰だか解らなかったフランシス・ン 私的にはン・ジャンユーの名前の方が馴染み深いけど 前髪あるとトニーとちょっと似てる? いやいやいやいや… 演じていたロコというギャングのボスは 硬派な男前で似合ってたね ジャックに死んだ弟の姿を投影していたロコは「兄弟」という関係を大切に思っていたに違いない だから兄弟分を殺した犯人が許せなかったんだろうな〜… 敵同士であるジャックとの間にチラっと見せる信頼関係なんかは お互いに「敵にしておくのは勿体ない」みたいな感情が混じっていて ちょっとトキメいた 何かこれって男の世界じゃん? 女じゃ有り得ない関係だと思うんだよなぁ (あ…『クローサー』では女怪盗と女刑事の間で成り立ってたか?) とにかくこの時の二人はカッコ良かった! うん 良かった!
エリック・ツァンは今回 寸詰まった体型と異様に高い声とコミカルな動きで みんなにバカにされる役だったけれど『インファナル・アフェア』ではマフィアのボスで ふてぶてしい親分にちゃあんと見えていたし こないだ見た『1:99』の特典映像で金像奨のスピーチをしていた姿には どちらの役とも違う熟練役者の威厳みたいなオーラがあって やっぱりただのオッサンじゃねーな と改めて心服した訳だ
グレース・イップは初め 兄家族を無惨に殺された妹として 仇討ちに燃える鋭い顔つきで登場したにも関わらず後半は普通の女の子っぽい柔和な表情になっちゃってて ちょっと残念 でも顔自体は素直に可愛いと思える女優さんだったv 唯一セクシャルな役どころだったジェイミー・オングは モデル出身?と思うくらい表情が不変 井森美幸似の顔はむしろグレースよりもボーイッシュな印象 クール系の化粧は似合ってたけど 恋愛が似合う女の子じゃなかった 「愛なんて自分がイイ思いするための常套句でしょ」って感じ? 分かり易くいえば「不二子ちゃん」系 ギャングの女だった時はそれでも良かったけど 「恋」に目覚めた乙女になった後は化粧を変えるべきだったと思うなー 服装は変えてたけどね 顔が同じじゃ意味ないって 特に眉毛ね 眉毛(苦笑)
全体的にタイトでテンポ良く進む映画だったけれど 個人のキャラクターに深みがないのが難点だったかと 特に思ったのがニコラス演じるジャックで どういう性格の男の子なのかイマイチ伝わらない感じがした 常にクールであんまり感情を出さないけど多分3人の中で一番正義感があって義侠心に厚い人? あんなに綺麗な顔をしているクセに女の子には興味がないような硬派な人? 敵も味方も傷つけずに助けたいと思っている理想家? むーん…
特典映像の中にある未公開シーンには 彼だけじゃなく他の2人もY2Kもロコも 人物の個性や感情がより深く語られるシーンばかりが入っていて 「なんでコレを切るんじゃー!」 と怒鳴りたくなった そして本編と同じくらいの長さがあるんじゃないか?っつーようなカットシーンの量に 段々解ってきて 「…テンポを優先させたな?」 という答えが出る
確かにこの“語り”を入れてしまうと あの軽快なリズムが狂ってしまう気がする ダラダラと間延びした映画にはしたくなかったんだろうし スタッフのコメントの中に 「最近の“X世代”と言われる若者の考えていることは我々の世代には理解ができません」 というのがあったのを思い出した 「この作品はそんな“X世代”の若者たちに面白いと思ってもらえるような映画にしたかった」 とも言っていたな
聞いた時は「X世代って何じゃ!」という気分だったけれど よくよく見ればタイトルの『ジェネックス・コップ』は『GEN-X COPS』と表記されているし これはやっぱり GEN=ジェネレーション(世代)だよねぇ…
つまり 私みたいに「キャラが読めなかった」とか言ってるのは ジェネレーション・ギャップによって彼らの感覚が理解できないと そういうことなのかも知れんね〜(苦笑)
寄る年波には勝てませぬ
『メイド・イン・ホンコン』1997年/香港
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