カタルシス
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2004年07月17日(土)  Love's La bour's Lost 

劇団たいしゅう公演『恋の骨折り損?』観劇

舞台は戦国 織田信長と濃姫の恋物語を主軸にした時代劇風の芝居だが ベースとなっているストーリーは 1594-95年に書かれたシェイクスピアの喜劇『恋の骨折り損(Love's Labour's Lost)』である

織田信長に村上幸平 豊臣秀吉に綾野剛 明智光秀に唐橋充 この3人は前クールの仮面ライダーに出演していた いわゆる”イケメン俳優”というヤツで 彼らの出演がきっかけになっているという邪な理由が今回の観劇の裏にあることは 敢えて否定しない どうせミーハーだもんね

濃姫役に三船美香 あの三船敏郎の孫娘だってことは チケット手配の際頭の隅にあったハズなのに 実際に舞台を観ているときには全然思い出さなくて
「あの子一人で貫禄あるなぁ…」
と のん気な感想を抱いていたりした

ええと 前半は結構おチャラけた展開で イケメンさんファンのウケを狙ったようなあざとい演出もちょこちょこ入ってきて 気楽に笑える展開
後半は重々しく切ない倒錯が生む悲劇を披露していた

…悲劇?

あらすじくらいはと思って調べておいた『恋の骨折り損』はシェイクスピアの喜劇 だったハズですが?!

本来の『恋の骨折り損』は
気まぐれなナヴァールの若き王が学問に打ち込むためといって 彼に従う貴族3人と共に 粗食・1日3時間睡眠・女人禁制の誓いを立てる ところがフランス王の遣いといって訪れた王女と3人の侍女にそれぞれが揃って一目惚れ 誓いの手前堂々と愛を打ち明けることができず 各人内緒の恋愛ゲームに四苦八苦する様子を 面白可笑しく けれども知的さを保った展開で愉しむ作品である

最終的には4人とも求婚し あと一歩で大団円というタイミングで フランス国王の訃報が届き 王女たちは「1年間その愛を保つことができたら求婚を受けましょう」という約束を残しナヴァールを去ってしまう という「お預け」段階で終幕を迎えてしまう話だ

今回の舞台ではこの先が描かれており むしろこっちがメインといった風情だった
要するに オリジナルなんじゃん!(苦笑)

個人的にはシェイクスピアよりも信長サイドの矛盾の方がスゴく感じて 何だってわざわざこの時代というか 彼らに置き換えて話を作ったんだろう?と疑問に思ったので調べてみたところ シェイクスピアがこの作品を書いた時代を日本史にすり合わせると丁度秀吉の時代で「太閤検地」を始めた頃になる もしかしたらそのつながりに注目してのことだったのかも知れないが いかんせん無理が多過ぎた

濃姫の侍女に ねね(秀吉の正室おね/北の政所)と ひろこ(光秀の正室煕子)ってところからしてイキナリ「ありえねぇ!」と思っちゃったし
百歩譲って煕子は美濃出身だから流すとしても ねねの方は尾張出身だっちゅーねん(笑)

いや チラシ見たとき ひろこなんてまた随分マニアックな人を出すんだなと 感心したのだが(光秀は糟糠の妻である彼女の他に側室を持たず生涯一筋を貫いている) 人間関係全然違ってたし… ねねは有名だからいいけど あれじゃ煕子がちょっと可哀想だよ

そして終始耳についた「信長」と呼び捨てにしてる光秀(笑)これもまた ありえねぇだろってばよ 一緒に観ていた友人は「家臣には信長のこと“おやかた様”と呼んで欲しかった」などとこぼしていたが そこまで要求するのは酷というものだろう

そもそも信長が無血平和を目指すって段階で違和感があるし 歴史創作であるにせよ 暗殺に失敗してお咎めなしなんて それこそありえないしなー…

それに濃姫と信長結婚してないじゃん!あの奇人にこの妻ありな夫婦だってのに 何年も離れ離れに過ごして やっと会えたと思ったら死に別れかよ 濃姫78歳まで生きてるっつーのよ(1612年没) 秀吉よりも長生きだよ

ありえねー ありえねー…

ちなみにアーマード(スペイン人)は いきなりシェイクスピア版の人物そのままで登場 一瞬「誰?」と思った 伝教者かと…(の割にはナマグサ/苦笑)

面白いな ここまでメチャクチャだと かえって面白い いっそ潔いというか 何というか…

明後日また同じ舞台を別の友人と観ることになっているのだが 何だか今回でお腹一杯になってしまった感があり 微弱に不安が残る

せめてもそっと上手に演ってくれないかね 数人を除く出演者のみなさん方(苦笑)

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『I LOVE ペッカー』鑑賞〜

エドワード・ファーロング主演のハートフル・コメディ かな? 青春ドラマにもかかってくる内容かも…
監督ジョン・ウォーターズが故郷ボルチモアへの愛を表現してるとかしてないとか 言われている賛否両極端なコメディ映画です

ボルチモアの小さな町で バーガー店のスタッフとして働く青年ペッカーは今 母親にもらった中古のカメラに夢中だ 町のあちこちで出会う何気ない場面を撮っては 個展に飾る作品に仕上げていく
個展といっても職場の壁面を借りて展示するだけのささやかなものだが それでも彼にとっては自分の作品を町のみんなに見てもらえる 最高のギャラリーだ

いよいよ個展開催の日 町の人々がペッカーの写真を愉む中 N.Y.でギャラリーを営む女性ディーラーが彼の写真に興味を示し ペッカーに「N.Y.で個展を開く気はない?」と持ちかける
その場に居合わせた家族共々大喜びのペッカーが 家族や親友・恋人を連れてN.Y.へと乗り出すと 彼の写真はあらゆるメディアで評価され またたく間に一躍有名人に!

全てが順風満帆に見えていたペッカーの出世劇 しかし のどかな町ボルチモアで生まれ育った彼らに 段々とその名声が重荷となっていく

ペッカーの作品をどんどん売り込みたいディーラーと 有名になる前の生活に戻りたいペッカー達 彼らの利害は一致を見せることができるのか?


特別何かスゴイことが起きるわけでもないし 感動ストーリーが展開されるわけでもありません
何気なかったハズの日々が 何かの切っ掛けによって大転回してしまうというハプニングに 右往左往してしまう人心がコミカルに描かれているだけです あとはもう 登場人物達の個性がどれだけ立っているかって部分がポイントなんじゃないかと(苦笑)

エドワード・ファーロングは非常に可愛いらしかったです ペッカーという青年は 年齢的には大人なハズなんですが 思い切り無邪気な感じの男の子 でもちゃんと恋人がいて ひと通りのことはもちろん解っている一般的な青少年でもあります

恋人のシェリーを演じるのはクリスティーナ・リッチ 外見的には幼い印象が抜けない彼女ですが その姿に反する大人びた雰囲気を持つ 一種独特な女優さん

この2人が違和感なくラブラブ・カップル(笑)に見えるのが とても可愛い
ちょっとポヤっとしているペッカーと シャキシャキして勢いのあるシェリーの バランスが絶妙でナイスな配役です

古着屋を営んで ホームレス達と仲の良い母
プールバーを経営している父
自宅の脇にだしたドライブスルーのビーフサンド屋が大人気の祖母は 自作のマリア像に熱心な祈りを奉げる敬虔なクリスチャン
異常なくらいにお菓子が大好きな妹
ホモ好きでゲイバーで働くことに生き甲斐を感じている姉
ペッカーの家族はみんな個性的

いつもペッカーのモデルを快く引き受けてくれる親友のマットは気の良いヤツですが 万引きの常習犯で その手癖の悪さが災いして働き口が見つからないのが 悩みといったら悩みのタネ
その他にもペッカーを囲むボルチモアの人々は 気の良い どこかのんびりと構えた 個性的な人物ばかりです

年若い青年が何気なく撮っていた写真が アート界に一大センセーションを巻き起こす様子から「アメリカのアート批判」と受け取る評論家もいたようですが ウォーターズ監督はそこまで考えてないんじゃないかと 何となく思います 何というか彼の作品 お馬鹿映画ばっかりだからさ(苦笑) 何も考えてないでしょ?みたいな印象 あるんだもん…

この作品のタイトルで検索してみると沢山のレビューが引っかかりますが 本当にてんでバラバラな感想が記されています 個人サイトの感想とかスゴイ面白いです(笑) 結構メタクソにけなしまくっている人が多いんですが 私はそんなにキライじゃありませんでした

どうせ映画の良し悪しなんか解らないし 結局最後は個人の好みの問題でしょ イイじゃん好きでも嫌いでも 見方に間違いなんてありはしないよ 私も嫌いな作品はけなす方向でいかせてもらってますんで(笑)あくまでも独断と偏見のサイトだってご了承の上ご覧下さいましね

うーんと ペッカーが注目される切っ掛けになった1枚の写真に写っているものが本当は何なのか 実はこれが気になって映画を見たハズだったんですが 結局何だったのか解らず終いでした(汗)

何かねこの映画R−15指定入ってるんですよ 何で15禁なのか全然解らない バトロワと同じなんて信じられない 何が引っかかってんですか??
そこで「あの写真が実はヤバいものなのかも?!」と変な目算をつけてみた訳なんですがね サッパリでしたね 画面止めて色んな角度から見てみましたが 解らなーい もしかして私 監督の罠に引っかかったクチなんでしょうか…(^^;)ゞ

まぁいいや

最後は故郷賛歌にふさわしい大団円で締め 観賞後に何か残ったかと問われると「…何も?」って言うしかない内容のなさですが 無条件ハッピーな気分には なれるラストでした

意味なんてないんですよ 多分 「楽しけりゃイイじゃん」って そんな映画

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『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』を鑑賞〜

余命幾ばくもないと診断された2人の男性が 入院していた病院を抜け出して 見たことのなかった海を目指すのだが 病院を抜ける際に拝借した車が 金を運ぶ途中のギャングのものだったことから ギャングと警察の両方に追われるという危ない旅になってしまう それぞれに末期の難病を抱えた2人は 無事に海まで辿り着けるのだろうか

話は簡単それだけです 逃げて追われて 撒いて撒かれて 時折しんみり・じんわり・ほんわり
でも全体的なテンポが良くて 主人公の2人が病人だってことを忘れてしまうくらい賑やかしくコミカルな展開です

目的は役者でも監督でもなく ただタイトルが有名な歌と同じで棚で見かける度に気になっていたってことと ドイツ映画だってことと あらすじ見たら面白そうだったって理由から借りてきた1本だったのですが 個人的に激ヒット でして!

主人公の一人マーティン(ティル・シュワイガー)が見せる上目遣いが ノーマンに似てる!絶対似てる!! と思ってしまい 妄想止まらず…(結局ノーマンかよ) 相方のルディの底なしに穏やかなキャラがまた絶妙なバランスで隣にいるもんだから この2人のちぐはぐなコンビにツボ突かれてしまったのでした

彼らを追いかけるギャングの方もヌケてて笑えるのにヤボったくなく また 警官をかわすときも洒落を利かせるのを忘れない 命の終末を告げられてあそこまで陽気になれるかは別にして 1つのことに固執して どんな手を使ってでも達成させたいと願う想いの強さは 実際の場合と違いはないのかも知れない そんな風にも見られる映画でした

天国では海の話をするのが流行り

ドイツにそういう定説があるのか それともこの映画の中だけの常識なのか解りませんが 海を見ずに死んだら天国の話題に入れないぞ というのが根底にあって 海への憧憬を深めていく主人公たちの ひたむきさが何ともいえない雰囲気を醸し出しています いい歳をした大の大人2人なんですが まるで少年のようなやんちゃぶりです

イカンなぁ… やんちゃなオッサンには弱いんだよ 本当まいっちゃうよなぁ…(苦笑)

そんな訳で マーティン強力プッシュです (どんな訳だ!)

『Love's La bour's Lost』2000年/アメリカ・イギリス


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