| 2007年08月29日(水) |
世界の壁 より 自分の壁 |
「 山中の賊を破るは易く、心中の賊を破るは難し 」
王 陽明 ( 中国の儒学者 )
It's easy to defeat the bandits in the mountains, but it's difficult to conquer the bandits in your mind.
Wan Yang Ming
陸上部時代、コーチ から 「 お前には二人の敵がいる 」 と言われた。
それは、「 強い ライバル 」 と 「 弱い 自分 」 を指している。
世界陸上4日目、男子200m二次予選で期待の 末続 が敗退し、今夜の見所は 女子棒高跳び の イシンバエワ による 「 記録更新 」 に集中した。
金メダル の確定後、余裕のある跳躍となったが、惜しくも世界新記録には届かず、私も含め観客席の隅々からは、大きなため息が漏れた。
スポーツの場合、強いライバルと競っているときよりも、自己の持つ記録に黙々と挑戦しているときのほうが、プレッシャーを感じることも多い。
ましてや、世界中が自分一人を凝視して、新記録を待ち望んでいる場合の重圧たるや、並大抵のものではない。
他者との競争では、相手の失策という勝機も在り得るが、自分との闘いにおいては、真の強さが求められるわけで、それ以外の勝利は存在しない。
冒頭の名言は、このような 「 自己記録への挑戦 」 というよりは、自分の心の中にある 「 弱さ 」 や 「 ズルさ 」 など、不徳との葛藤を示している。
まさに、東洋的思想の美徳を象徴する 「 自分を律する姿勢 」 が込められた言葉で、自分自身の心にある邪悪な気持ちを戒めたものといえよう。
残念ながら近頃では、自分自身に対する誇りや、羞恥心というものを失い、すぐに他人を妬んだり、人前で愚痴をこぼす連中が増えてしまった。
精神学的には 「 自己嫌悪 」 という症状にあたるのだが、自分がダメ人間なので、周囲も愚かだろうという考えから、万事に否定的な意識を持つ。
そのような気持ちに陥った人、あるいは陥りそうな人こそ、自らの生活態度や生きる姿勢を律し、「 自分でいることの勇気 」 を持たねばならない。
いまのところ世界陸上では日本勢が不振で、目立った活躍をみせていないが、負けて競技場を後にする選手の中には、悔しさを露にする者も多い。
彼らの涙は、「 強豪に敗れた 」 ことが原因ではなくて、「 大舞台で自分の力を発揮できなかった 」 ことへの後悔が大部分なのである。
そういう気持ちを持たずに、外国人選手との体格差を嘆く者に未来はなく、自己の努力不足を認め、精進を重ねる者により、歴史は塗り替えられる。
何事も、いまの状況が思わしくないのは、すべて 「 自分の非 」 であって、それに落ち込むのではなく、猛省し、努力、改善することが重要なのだ。
結果はともかく、敗退した選手らが 「 世界の壁 」 よりも 「 自分の壁 」 を、いつか超えてくれることを祈念しつつ、今後も声援していきたいと思う。
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